49July 2024 vol.48 このような状況は、「よくあること」「しかたがないこと」だと思いますか? また、この文章に登場する患者さんは、どんな人をイメージしたでしょうか? 母親と子どもの様子を思い浮かべた方が多いかもしれません。 でも、実際は知的障がいのある成人患者さんと付き添いのヘルパーさんかもしれませんし、極度の歯科恐怖症の患者さんとその配偶者かもしれません。実は、怖がったり嫌がったりこちらの言うことを聞いてもらえなかったりということは、患者さんの年齢と関係なく起こりえるのです。とくに主訴はないが、検診希望で来院した患者さん。来院からずっと付き添い者にしがみつき、今にも泣き出しそうな顔で不安そうに周りを見ている。歯科衛生士が患者さんの名前を呼び、診療用ユニットに誘導して座らせようとしたが、嫌がって座らない。しょうがないので無理に座らせたが、今度は泣き出してしまい、寝転んでくれない。近くでは、歯科医師がミラーを持って立っている。歯科衛生士は、「なんとかしなくちゃ」と、患者さんに寝転ぶよう指示しながら、体を支えて寝かせようとしている。付き添い者は「痛くないから!」と大きな声で励ます。患者さんの泣き声がだんだん大きくなっていくので、「大丈夫」「痛くないから」「見るだけ、見るだけ」という周りの声もよりいっそう大きくなっていく。すると、患者さんの泣き声はさらに大きくなり、起き上がって逃げようとして手足をばたつかせてしまう。結局、なかば強引に押さえつけて、口腔内を見るだけは見た……。イメージしてみてください
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