歯科衛生士 2024年9月号
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 私が子どもだった頃、まだあちこちで焚き火が許されていた。近所で集まって落ち葉を掃除して、焚き火をしながら焼き芋を作った記憶がある。だが、現在、焚き火は許されなくなった。火災に発展する恐れがあるからである。事実、最近では昔ほど消防車が走っている音を聞かなくなってきた。喫煙者が減ったことも一因であると思うが、火の不始末による火事という「人災」は時代とともにコントロールされてきているように感じる。 一方で、「人災」と対比される「天災」は増えているように感じてしまう。いや、そんなことはなく、昔から同じ確率で起こっているのかもしれないが、情報網が発達した今、局地的な出来事も電光石火の勢いで世界を飛びまわるためそう感じるのかもしれない。大雨、洪水、土石流、崖崩れ、噴火、地震、津波、落雷、大雪と世界の災害を数え上げれば枚挙にいとまがない。そして、往々にして災害で被害者が出れば「ちゃんと備えはしていたのか?」と責任の所在を求められる。 災害の程度はどうあれ、診療時間中に災害が発生すれば、患者さんを含めた歯科医院内における安全の確保はすべて歯科医院側に責任を求められると言ってもよい。私たちエムズ歯科クリニックは、開業してから21年間の歴史のなかで、災害が起きるたびに災害時対応マニュアルを更新してきた。それは生きた経験から書かれたものであり、混乱時に対応に困ったこと、スタッフに起きたメンタルの変化なども踏まえて記載してきた。 今回の特集では、それらをもとに地震災害発生のタイムラインを仮定してまとめた。ぜひ一読していただきたい。2019~2023年、COVID-19感染症が世界を席巻した。あれが人災なのか、天災なのか、私にはわからない。ウイルスは自然界に存在するし、感染は人間の行動によって拡散する。災害に対するあらゆる解釈は、その見方によって変わることが多い。私たちのなかにひとつの基準をもっておきたい。荒井昌海Masami ARAIエムズ歯科クリニック前理事長歯科医師荒井美里Misato ARAIエムズ歯科クリニック歯科衛生士吉尾虹歩Nijiho YOSHIOエムズ歯科クリニック歯科衛生士鈴木美乃里Minori SUZUKIエムズ歯科クリニック歯科衛生士遠藤瑞季Mizuki ENDOエムズ歯科クリニック歯科衛生士田路歩美Ayumi TOJIエムズ歯科クリニック歯科衛生士Illustration:寺田久美September 2024 vol.48平塚千浩Chihiro HIRATSUKAエムズ歯科クリニック歯科衛生士中川穂乃花Honoka NAKAGAWAエムズ歯科クリニック歯科衛生士61災害が起きたとき、患者さんやスタッフの安全を守るために荒井昌海 エムズ歯科クリニック・歯科医師ュアル

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