歯科衛生士 1月
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歯科衛生士 January 2015 vol.39681咬合治療が必要な場合・不要な場合、 歯周病患者さんに見る 歯周病患者さんに見る Illustration:佐原周平、飛田 敏 患者さんの口腔を歯周病から守るために、歯科衛生士はプラークコントロールを行いますが、中等度以上の歯周病で、歯周組織の崩壊によって咬合崩壊やフレアーアウト(前歯が前方に押し広げられている状態)などが生じている場合、歯列を固定したり、咬合そのものを調整することが重要になります。 一方、残念なことに、「歯周病のコントロール」として必要以上に咬合をさわった(介入がなされている)症例を目にすることがあります。これは、歯周病のコントロールと咬合の関係がきちんと理解されていないためなのでしょう。 本稿では、歯周病のコントロールと咬合調整などの治療の介入がどうかかわっているかを解説するとともに、①プラークコントロールだけで歯周病の悪化を防げる場合、②治療介入(咬合をさわること)が歯周病のコントロールのために必要な場合のどちらもあることを説明します。そのうえで、歯周病の悪化を防ぐために、読者である歯科衛生士の皆さんが口腔内で診るべきポイントを解説します。 初診の状態に至るには、唾液量や唾液のpH、細菌の種類、食生活、歯列、咬合状態、パラファンクションなどさまざまなファクターと年単位の経過が絡み合っています。2つの症例の現在のプラークの状況は似ていても、30歳の頃、20歳の頃にさかのぼってのプラークコントロールの状態はわかりません。CASE1の患者さんは、たしかに現在はプラークインデックス(PI)が54%です。しかし若い頃はほとんど磨いていなかったのかもしれませんし、歯周病の抵抗力がCASE2の患者さんより劣っているのかもしれません。初診の状態だけを見て、歯周病の進行に咬合がどのようにかかわってきたかの診断を下すことは難しいのです。そのため、歯周病治療の初期治療の段階では、PI、唾液量、唾液のpH、食生活、細菌の種類、プラークコントロールが困難になる歯の位置など、可能な範囲で観察しましょう。咬合の関与が疑われれば、不正咬合の様式や顎位、咬頭干渉の状態など、どのような咬合による負荷が歯周病の進行にかかわっていたか、歯科医師が詳しく診断する必要があります。 治療介入する場合には、予後も考慮して治療を計画する必要がありますので、その患者さん個人のリスクファクターを探し出すことも重要です。さらに治療が進んだ段階や、メインテナンスの段階で歯科衛生士が観察すべき咬合関与の注意点については、これから読み進めていくことにしましょう。年齢、全心疾患など(宿主)プラークコントロールなど(環境)口腔内細菌咬合歯周病「咬合が悪い=治療が必要」じゃない! 咬合 PART初診の状態だけでは判断できない
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