歯科衛生士 1月
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69歯科衛生士 January 2015 vol.39 どちらもあります 咬合のトラブル 咬合のトラブル今井真弓Mayumi Imai今井歯科クリニック歯科医師今井俊広Toshihiro Imai今井歯科クリニック歯科医師 そもそも、咀嚼による力は、顎口腔系の各組織 (歯、歯周組織、咀嚼筋肉、顎関節)によって受け止められます。その力は食物を粉砕するほどの「破壊する力」です。とはいえ、人間の生命機能のための「咀嚼」ですから、顎口腔系の各組織1)がそれぞれ正常な状態であれば(図1)、本来は耐久可能な力のはずです。 ただし、力がそれぞれに均等に配分されるとは限りません。その個人の弱い組織に力の影響が集中する可能性もあります。また、それぞれの組織の耐久性にも個人差があります。ですから、咬合の与える影響についてはあくまでも患者さん単位で診断し、治療計画を決定すべきです。 同世代で同じような歯列不正があり、良好な咬合状態とはいえない2人の患者さんが来院されました。プラークインデックスの状況も似ており、両者ともに近年歯周病を意識し、自分なりにブラッシングをがんばっているとのことでした。 CASE1の患者さんには、プラークコントロールに加え、咬合のコントロールを行いました。しかしながら、CASE2の患者さんにはプラークコントロールのみと診断しました。 どうして診断がわかれたのか? この判断の違いの根拠を勉強していきましょう。 の影響は患者さん単位で診断する咬むという動きは、咀嚼筋、顎関節、歯の協調した下顎運動で成立する。それぞれが正常な状態であれば、咀嚼による力は受け止められる。39歳 女性 主訴:歯の動揺歯周病:重度プラークインデックス54.4%咬合状態が悪く歯周病は重度CASE140歳 女性主訴:検診希望歯周病:軽度プラークインデックス50%咬合状態が悪いが歯周病は軽度CASE2咀嚼による力の影響は、人によって違うアンテリアガイダンスの確立適正な咬合高径でのバーティカルストップの確立神経・筋機構の調和顎関節と周囲組織の安定図1 安定した顎口腔系それでは、上の2つの症例を見ていきましょう!(参考文献1より引用改変)
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