口腔機能発達不全症“いつもの診療”のアレンジで機能を診る「口腔機能発達不全症」がわかる知識編前はじめてのはじめに ~生きる根幹にかかわる口腔機能の発達を支える~ 人生100年時代に向かっていると言われて久しいですが、その人生のQOL(生活の質)を左右するのは、口腔機能がかかわる「食べる喜び」や「話す楽しみ」です。口腔機能は「食べる」「話す」「表情を作る」「呼吸をする」という生きる根幹を成すもので、全身の健康と密接な関係にあります。 読者の皆さんはすでに何度も見てきた図かもしれませんが、下図において、小児期に機能を獲得して、「高い山」を作れなければ、高齢期に加齢にともなう機能低下を心配するようになる前に、成人期にすら口腔機能を発揮することは難しくなるでしょう(図中赤点線)。口腔機能は“食べる”ことをはじめとした「口を使うこと」を通して発達します。皆さんがこれから取り組むのは、「山が低くなっている子どもたちを高い山に登らせるようお手伝いすること」です。まずはそのイメージを持ってみましょう。 昨春には「口腔機能発達不全症」という新病名が誕生し、この疾患が公的保険に収載されたことにより、口腔機能発達不全の認められる小児への対応が可能となりました。この対応のほとんどは、歯科医師の監督の下で歯科衛生士さんが実際に関与することができます。すでに臨床での取り組みが始まっている一方で、「具体的にどのような場合に対応すればよいのかよくわからない」という声も聞かれています。本稿を読み、ぜひ一人でも多くの歯科衛生士さんに「口腔機能発達不全症」に積極的に携わっていただきたいと思います。 発達には個人差がありますが、「何か変だ」と問題点が見つかったら、その時点からアプローチしてください。子どもたちは成長発達途上にありますので、間に合います! ぜひ気づいてください。それは子どもたちのより良い育ちにつながるだけでなく、子育て支援に貢献することにもつながります。皆さんがこの新しい取り組みに、きっと大きなやりがいを感じていただけると信じています。加齢による口腔機能の変化のイメージ本稿で述べる病態の関連性を理解した歯科衛生士のかかわりで、子どもたちの生涯のQOLにかかわる望ましい口腔環境を作ることができる。(厚生労働省・中央社会保険医療協議会総会が作成したものを一部改変)口腔機能乳幼児期・学齢期成人期高齢期乳幼児期・学童期に適切な口腔機能(咀嚼機能等)を獲得し、成人期に至った後、加齢にともない(機能)低下していくイメージ乳幼児期・学童期に、歯科疾患や口腔機能の獲得、発達の問題等を生じたイメージ高齢期に、歯科疾患や全身疾患にともなう口腔(内)症状(合併症)等を生じ、歯科医療による介入が行われないイメージ口腔機能の維持・向上(回復)を図るための歯科医療による介入発達期のため、歯科医療による介入で“食べる”ことの再学習と口腔機能向上トレーニングを行うことで機能アップは可能!1特 集歯科衛生士 June 2019 vol.4320
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