TOPIC座位をマスターして誤嚥を防ぐサバイバー舌を部分的に切除し腕や腹の一部で皮弁再建を行うと、食べ物の送り込みが難しくなったり構音障害が出たりすることがあります(図1)。通常のように水平位での口腔ケアが可能な場合もありますが、口腔内に水を保持することが難しく、意識して嚥下しなければ、すぐにむせてしまう場合もあるので、注意が必要です。口蓋の一部を切除することで、顎義歯を使用しなければ口腔内の陰圧が保てなくなり、食事や会話が困難になります(図2)。上顎の開洞部から水が入ると直接咽頭に流れ込んでしまうため、バキュームでの吸引の位置が重要になります。舌がんの場合上顎がんの場合 近年、がん治療等を受けられる患者さんにおいて、術前から術後の周術期に包括的な口腔機能の管理(周術期等口腔機能管理)を行うことが重要視されています。病院でがん治療を受けられた患者さんが、退院後も継続して口腔管理を行うため、かかりつけ歯科医院へ来院されるケースは増えていると思います。 がん治療によって、患者さんにはさまざまな影響が現れます。中でも、口腔がんの治療後の患者さんでは、右記に示したように、舌や口蓋の部分切除などにより口腔内の環境が大きく変化していることがあります。また、口腔内の状態に変化はなくても、咽頭期の問題で嚥下機能障害を抱えて退院されることも少なくありません。 入院中に嚥下訓練などを行い、経口摂取ができるまでに回復してから退院されることがほとんどですが、治療前と同じ食形態が摂取できているとは限りません。患者さん個々の状況に合わせて、食形態や体勢なども工夫しながら安全に経口摂取できるよう訓練し、場合によってはお茶やお水にもとろみ剤を使用するなど、日常生活から誤嚥予防が必要になっていることもあります。 このような患者さんでは、通常の方法で口腔ケアを行うとさまざまなリスクをともないます。そこで今回は、注意すべきポイントとして、「姿勢」「手技」の2点についてご紹介します。口腔がんの患者さんでは、誤嚥予防が必須口腔がん経験者が Illustration:野村俊夫64歯科衛生士 July 2021 vol.45
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