歯科衛生士2021年7月号
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症例をシェアして、ステップアップ!Case42はじめに―コミュニケーションをつうじて、リスクを予測し対応する― う蝕や歯周病の治療によって口腔内の状態が良好になった後も、その状態を守り維持するためには、起こり得るリスクを予測しながら、その都度対応していく必要があります。したがって、歯周基本治療中だけに留まらず、患者さんとつねにコミュニケーションをとりながら、日常生活におけるリスクを予測して聞き出す力も歯科衛生士として求められるスキルであると考えます。 本症例は中等度歯周炎で、生活習慣やライフステージ、心理的側面などから、ブラキシズムやTCHなどが歯周組織に影響している可能性を考え、ナイトガードを含めてアプローチを行い、現在10年目になります。前述のようにコミュニケーションをとって得られた情報を基に、リスクに対応しながらメインテナンスを継続した長期症例として報告させていただきたいと思います。予想以上の進行にショックを受けていた患者さん 患者さんは初診時51歳の女性で、「歯が伸びてきた気がする、歯周病ではないか」という主訴で来院されました(表1)。51歳という年齢をふまえると、DMFTは9歯とう蝕経験がそれほど多くはなく、受診のきっかけがないまま歯周病に気づかずに過ごしておられたようです。ご自身で歯周病が心配になり、自主的にブラッシングをていねいに行ったブラキシズムやTCHなどによる歯周組織への影響が続いている症例[キーワード] ブラキシズム、TCH、歯周組織●45歳●1996年埼玉歯科衛生専門学校卒業●歯科衛生士歴:24年目●勤務形態:常勤●勤務先:患者自らが健康を守れるように口腔に対する意識を育て支援し、生涯にわたってかかわり続ける歯科医院を目指している。柳 妙子さんTaeko Yanagi田中歯科クリニック[埼玉県]歯科衛生士日本ヘルスケア歯科学会スタディーグループ奥山会今回症例を紹介してくれるのは……表1 患者さんの基本情報年齢、性別51歳(2011年10月初診時)、女性主訴歯が伸びてきた気がする、歯周病ではないか心配DMFT9歯科的既往歴う蝕治療は受けたものの、それ以降受診する機会がなく、メインテナンスを受けたこともなかった全身的既往歴子宮筋腫による子宮全摘手術歴あり喫煙歴なし73歯科衛生士 July 2021 vol.45

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