歯科衛生士2021年8月号
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CASE8本欄では、臨床に取り組まれている歯科衛生士の方にご登場いただき、日頃から後進の育成にあたっているアドバイザー委員のアドバイスを受けながら症例報告をまとめていただきます。臨床を振り返り、さらなるステップアップにつなげていただく場、また症例をシェアすることでともに学び合える場としていただけることを期待しています。[アドバイザー委員(50音順、敬称略)]奥山洋実/小林明子/塩浦有紀/田村 恵/山口幸子誌上ケースプレゼンテーションCASE PRESENTER●28歳●2014年福岡医療短期大学卒業●臨床経験年数:8年●所属学会・スタディーグループ:日本歯周病学会●勤務先:2012年に開院して以来、すべての患者さんにう蝕や歯周病、全身疾患のリスク評価を行い、個々人に合わせた予防プログラムを立案。さらには、エビデンスに基づいて低侵襲な治療を行い、良好な状態でメインテナンスへと移行することを目標に診療を行っている。はじめに 新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの生活や仕事のあり方、さらには人生観、健康観をも大きく変化させたのではないでしょうか。 人生100年時代と言われている昨今、予防、治療、介護の位置づけはそれぞれ変化しつつあります。そのようななか、歯科においては、患者さんのライフステージにおける年齢や性別、生活環境、全身疾患、病状などの条件を考慮し、各々の発症リスクを調べて予防していく“オーダーメイド型の治療”が今後は必須になってくるのではないかと筆者は感じています。 また、予防と治療は表裏一体で、目の前にある疾病を治癒することだけが目的ではなく、そこに隠されたリスクを可視化し、コントロールすることによって疾病を未然に防いで再発を防止することこそが重要であると考えます。 そこで本稿では、患者さん自身が歯周基本治療をとおして口腔の健康の価値に気づけた結果、疾病発症のリスクを理解し、現在も良好なSPTの経過をたどっている1症例を報告したいと思います。初診時の所見 患者さんは初診時70歳の女性で、2018年4月に「左上の歯のぐらつきが気になる」という主訴で来院されました(表1)。主訴部位には咬合痛、打診痛を適切な医療面接によって患者さんの治療へのモチベーションを高める広汎型慢性歯周炎患者が良好にSPTへと移行できた症例[キーワード] 医療面接、モチベーション、歯周炎、SPT岩田光加Mika Iwataなみき通り歯科 [愛知県]歯科衛生士年齢、性別70歳(2018年4月)初診時、女性主訴左上の歯のぐらつきが気になる現病歴以前にも腫れや出血があったが、放置していた。また、ぐらつきが大きくなってきた気がする歯科的既往歴10年以上前に157を抜歯。経緯不明全身的既往歴特記事項なし全身状態喫煙歴定期健診は受診がなく、以前に骨密度に関して少し指摘されたことがあったが、通院および服薬はない。親族に糖尿病の方はいないとのこと。なお、20~60歳までは1日1、2本程度の喫煙あり。現在は禁煙している職業主婦表1 患者さんの基本情報 初診時の主訴、現病歴、既往歴、全身状態等の情報を示す。83歯科衛生士 August 2021 vol.45歯科衛生士 August 2021 vol.45

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