歯科衛生士 2022年3月号
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 歯科を受診する高齢患者さんに問診すると、既往歴や内服薬のあまりの多さに驚かされます。75歳以上の高齢者の増加にともない、薬物療法の需要が高まっている表れだと考えます。薬の副作用は、口内炎や口腔乾燥、粘膜・歯肉出血、摂食嚥下機能の低下など多様化・複雑化してみられることもあり、「定期的に口腔ケアをしているのに、なかなか口腔状態が改善しない」という原因が、じつは患者さんの服用薬だったということも少なくありません。そのため、患者さんの服用薬を把握しておくことは必須でしょう。 皆さんは、2019年6月に厚生労働省より「高齢者の医薬品適正使用の指針」1)が示されたのをご存じでしょうか。そのなかで、「処方の確認・見直しは、医師、歯科医師、薬剤師が中心となるが、生活の質(Quality of Life;QOL)の維持向上を共通の目的として、高齢者の日常生活の様子等に関する有用な情報を持ち、服用状況の管理や服薬支援も担う他職種との連携が必要である」と明記されています。連携に長谷剛志 Takashi HASE公立能登総合病院歯科口腔外科部長・歯科医師金沢大学大学院医薬保健学総合研究科外科系医学領域顎顔面口腔外科学分野非常勤講師村田 航一 Koichi MURATA市立輪島病院薬剤部主任薬剤師あたって各職種の役割も示され(表1)、歯科衛生士の役割として「口腔内環境や嚥下機能を確認し、薬剤を内服できるかどうか(剤形、服用方法)、また薬物有害事象としての嚥下機能低下等の確認」と記載されているのです。これは、かなりハードルが高い課題であると感じる反面、歯科衛生士に対する期待の表れとも捉えることができます。 筆者も、服用したはずの薬が口腔内に残留しているケースにしばしば遭遇します(図1)。口腔は服用薬の入口であるため、しっかり薬が飲めているかどうかに気づけるのは普段から診療や歯科訪問診療で口腔内を観察する機会が多い歯科衛生士がもっとも適任であると考えられます。 今回は、「患者さんがしっかり服用できているかどうか」を見極めるための知識と口腔ケア時に気づける「出血することが多い」「口腔粘膜炎が治らない」「口腔乾燥がみられる」という3つの現症をもとに、おさえておくべき薬の情報をお伝えします。Illustration:もり谷ゆみ24特集いま、薬の知識は歯科衛生士にも求められる!DHが気をつけておきたい口腔内への副作用別服用

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