歯科衛生士 2022年3月号
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乳酸酸ギギ酸乳酸 口腔内にはいろいろな細菌が生息していますが、そのうちう蝕原因菌には、①酸を産生する能力が高い、②酸性環境でも平気で生育できる(耐酸性が強い菌である)、③ネバつきの強い基質(不溶性グルカン)を菌体の周囲に放出し、歯面にガッチリと固着する能力が高い、という特徴があります。 これらの特徴をすべて兼ね備え、高いう蝕誘発能を有していることから、う蝕原因菌の代表選手とされている Streptococcus mutans(ミュータンス菌、S. mutans)は、乳幼児の口腔細菌叢に存在する菌の中でもっとも研究されている細菌種の一つです。S. mutansの定着時期(いつ頃やってくる?)と感染源(どこからやってくる?)については、これまでに数多くの研究が行われています1)。久保庭雅恵Masae KUBONIWA大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座予防歯科学准教授・歯科医師天野敦雄Atsuo AMANO大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座予防歯科学教授・歯科医師Illustration:寺田久美58連載内で紹介している文献を、web上で見ることのできるものはリンクつきでまとめました。https://www.quint-j.co.jp/web/shikaeiseishi/index.php不溶性グルカン令和のう蝕に関する皆さんの常識を、サイエンスベースで覆します! 令和のう蝕病因論(カリオロジー)は、ミュータンス連鎖球菌と砂糖だけじゃ語れないのです。第2回脱・昭和の常識!う蝕原因菌の特徴酸をつくる能力が高い!う蝕原因菌の特徴をすべて兼ね備えるS. mutans酸性環境でも平気!歯面にガッツリくっつく!ペリクルう蝕原因菌はいつ頃どこからやってくる?令和のう蝕病因論(1)~菌・酸・糖に関する最新情報~今回は、「令和のう蝕病因論」のうち、う蝕の発生にかかわる「菌」「酸」「糖」についてどのように捉えたらよいか、最新の知見もふまえて解説します。「母子伝播を防ぐためにスキルシップは控えるべき」「食品や飲料の中に糖の量が多ければ多いほどう蝕になりやすい」などと思われていることも多いですが、必ずしもそうではないことが見えてきます。

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