68宿主と歯(個体要因)う蝕微生物(病原要因)飲食物(環境要因)Newbrunの輪宿主と歯微生物う蝕(細菌叢)時間(生活)飲食物(食事内容) 生活習慣病(life-style related diseases)は、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」と定義されることから1)、食習慣や口腔清掃習慣、喫煙などの「生活習慣要因」がその発症・進行に深く関与するう蝕や歯周病もその範疇に入ります2)。ただし、生活習慣の積み重ねにより発症・進行する慢性疾患には、「生活習慣要因」のみならず、「遺伝要因」「外部環境要因」など個人の責任に帰することのできない複数の要因も関与していることから、「生活習慣病」という呼称を用いると、「病気になったのは個人の責任」といった、疾患や患者さんに対する差別や偏見が生まれるおそれがあります。 このことから、世界保健機関(WHO)は近年、生活習慣の積み重ねにより発症・進行する慢性疾患で、かつその発症に複数の要因が関与する疾患に対して、非感染性疾患(NCDs:Non-communicable disease)という呼称を用いるようになりました3)。久保庭雅恵Masae KUBONIWA大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座予防歯科学准教授・歯科医師天野敦雄Atsuo AMANO大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座予防歯科学教授・歯科医師Illustration:寺田久美(文献4、5より引用改変)連載内で紹介している文献を、web上で見ることのできるものはリンクつきでまとめました。https://www.quint-j.co.jp/web/shikaeiseishi/index.php「Keyes(カイス)の輪」は、宿主・微生物・飲食物という3つの因子を輪で表現し、この3要因が重なり合った部分でう蝕が生じる、という病因論を示したモデル。その後Newbrun(ニューブラン)により宿主・微生物・飲食物に加えて時間の因子が追加されたが、個人をとりまく社会環境要因や保健行動要因の関与については明記されていなかった。令和のう蝕に関する皆さんの常識を、サイエンスベースで覆します! 令和のう蝕病因論(カリオロジー)は、ミュータンス連鎖球菌と砂糖だけじゃ語れないのです。第3回Keyesの輪脱・昭和の常識!う蝕の病因論を示すモデル(昭和の常識)う蝕はかつての“生活習慣病”(現在のNCDs)のひとつう蝕は非感染性疾患令和のう蝕病因論(2)~根面う蝕に関する最新情報~今回は、「令和のう蝕病因論」のうち、高齢者における残存歯の増加とともに年々問題となっている「根面う蝕(象牙質う蝕)」について解説します。歯冠う蝕(エナメル質う蝕)と比較すると、その病因論はさまざまな点が異なります。最新の知見をふまえて、詳しく見ていきましょう。
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