歯科衛生士 2022年8月号
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F- これまでに解説してきたように、う蝕は口腔細菌叢のバランスの変化(ディスバイオーシス)によって引き起こされる疾患です。発酵性糖質の頻繁な摂取や唾液量の減少などにより、プラーク中で数が増えた酸産生菌が酸をたくさん産生し、長時間にわたりプラークの酸性度が強くなると、酸性に弱い善玉菌の数が減少します。その結果、酸に強い悪玉菌が大多数を占める状態(ディスバイオーシス)となり、う蝕のリスクが高まります2。このような状態に至る前に、毎日のブラッシングで悪玉菌のエサになる発酵性糖質を除去するとともに、悪玉菌が増えかけた(ディスバイオーシスの状態になりつつある)プラークも除去して、善玉菌主体の菌叢に戻すのがセルフケアの第一の目的です。久保庭雅恵Masae KUBONIWA大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座予防歯科学准教授・歯科医師天野敦雄Atsuo AMANO大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座予防歯科学教授・歯科医師Illustration:寺田久美連載内で紹介している文献を、web上で見ることのできるものはリンクつきでまとめました。https://www.quint-j.co.jp/web/shikaeiseishi/index.php46再石灰化の際にフッ化物イオンが存在すると、歯質の主成分であるハイドロキシアパタイトの結晶に取り込まれ、酸に溶かされにくいフルオロアパタイトが形成される。Ca10(PO4)6F2令和のう蝕に関する皆さんの常識を、サイエンスベースで覆します! 令和のう蝕病因論(カリオロジー)は、ミュータンス連鎖球菌と砂糖だけじゃ語れないのです。第7回脱・昭和の常識!ハイドロキシアパタイトCa10(PO4)6(OH)2フッ化物によって酸に溶けにくい歯質となるフッ化物イオン発酵性糖質とプラークを除去し、ディスバイオーシスを防ぐフルオロアパタイトセルフケアの目的・指導戦略令和のセルフケア~指導戦略の最新情報~う蝕予防におけるフッ化物応用の普及から60年以上、フィッシャーシーラント治療の導入から50年以上が経過しています1。しかし、特に高齢化が進む地域社会においては、う蝕が依然として重要な疾患であることに変わりはありません。今回はセルフケアの指導戦略の最新情報についてご紹介します。

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