歯科衛生士 2022年10月号
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舌 60.0%27口腔がんのおもな発生部位(文献4より作成)Illustration:すぎやまえみこ、渡部伸子(rocketdesign)October 2022 vol.46菅原圭亮Keisuke SUGAHARA東京歯科大学口腔病態外科学講座准教授・歯科医師そのほとんどが舌縁部に発生。舌尖や舌背にはほとんど発生しない。下顎の発生率は上顎の約2倍。上下顎ともに臼歯部に多く見られる。頬粘膜9.3%硬口蓋3.1%歯肉 17.7%上顎 6.0%/下顎 11.7%口底9.1%口腔がんはどんながん? 口腔がんには悪性黒色腫や骨肉腫に代表される肉腫も含まれますが、大半は口腔を覆う粘膜に発生するがん“口腔扁平上皮癌”です。好発部位は舌で(全体の約60%)、次いで多いのが歯肉で約18%を占めます4。歯肉は直下に骨が存在し、早期から顎骨に浸潤するという特徴があります。そのため、歯肉炎や歯周炎などの歯周疾患と間違えられやすく、歯周治療や抜歯を行った後、治癒不全となり、がんとわかる場合もあります。 その見た目はさまざまで、進行した状態で病院を受診した患者さんのなかには、「いつもできる口内炎だと思って放置していた」「市販薬を塗ったら少し良くなったのでようすを見ていた」という方が少なからずいます。症状を詳しく聞き、メインテナンス時などに早期発見し早期治療をすれば、ほぼQOLへの影響はありませんが、進行した場合の治療では構音障害、摂食嚥下障害など大きな影響が出てしまいます。口腔外にも手術創ができる場合もあります。いまや患者さんのほうが詳しい? がんの知識 タイトルにあるように、歯科に通院する患者さんのほうが歯科医院で働くスタッフよりもがんに詳しいこともあるかもしれません。なぜなら、国民の2人に1人はがんになり、3人に1人はがんで亡くなる現代では、健康に働いている私たちよりも、実体験として、もしくはご家族の闘病で、全身のいろいろながんに関して当事者としての知識がある人が増えているからです。 だからと言って、歯科医院で働く歯科衛生士の皆さんが全身のがんを知り尽くす必要はないと個人的には考えています。しかしながら、少なくともがんとはどんなものでどのような治療があり、口腔とどのような関係があり、何をしなければならないのかは知っておく必要があるでしょう(もちろん口腔がんに関しては深く知る必要があります!)。 歯科衛生士の皆さんの職務である歯科予防処置には、う蝕や歯周疾患だけでなく、疑わしい口腔粘膜疾患を早期にキャッチして、しかるべき診察・検査を受けるように患者さんを導くこと、そして疾患の発症を未然に防ぐことも含まれると考えます。 今回の特集では、以前から多くの方からご質問をいただいている口内炎と口腔がんの違い、病変の所見の取り方、口腔がんの治療法、新しい口腔粘膜観察方法、一般的ながんの治療法とそれに関係する口腔内の変化について、盛りだくさんに詰め込んでみました。

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