ポルフィリンは、鉄と結合してヘムとなり、血液に含まれるヘモグロビン中のヘムとして酸素運搬を行うなど、自然界に広く存在する色素です。口腔内の口腔細菌や真菌の中には、このポルフィリン(特にプロトポルフィリン IX)を産生し、菌体内に蓄積するものが存在し48ます。これらの菌は、波長405nmの青色可視光線で励起されると赤色蛍光を発します。 この波長を利用した定量的光誘導蛍光法(Quantitative Light-induced Fluorescence:QLFTM)を用いて上図のように観察すると、成熟したプラークは、真菌(カビ)の一種であるCandida albicans(カンジダ菌)や細菌のPrevotella melaninogenicaなどが産生するポルフィリンにより、赤色~橙色の蛍光を発します1。Illustration:寺田久美、今﨑和広久保庭雅恵Masae KUBONIWA大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座予防歯科学准教授・歯科医師天野敦雄Atsuo AMANO大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座予防歯科学教授・歯科医師©2022 NexStage LLC連載内で紹介している文献を、web上で見ることのできるものはリンクつきでまとめました。https://www.quint-j.co.jp/web/shikaeiseishi/index.php©2022 NexStage LLC製品名:Qスキャン・プラス(AIOBIO)。QLFTMと専用フィルターを用いることにより、肉眼では観察しにくいプラークの付着や歯面の状態などが可視化される。右に示した口腔内写真では、歯頚部のプラークが赤色蛍光を発している。令和のう蝕に関する皆さんの常識を、サイエンスベースで覆します! 令和のう蝕病因論(カリオロジー)は、ミュータンス連鎖球菌と砂糖だけじゃ語れないのです。第9回脱・昭和の常識!QLFTMを用いたプラークの観察蛍光発色を利用した検査方法プラークの成熟度を視覚化するハイリスク・ローリスクを探せ!~リスクを視覚的に見極める最新情報~皆さんは今までに、う蝕多発者に特有の黄色いプラークに気づいたことはありませんか? また、逆に、口腔衛生状態がそこまで良くはないのにう蝕にならないなという人において、歯面に付着している黒い色素沈着に気づいたことはありませんか?今回は、臨床の現場で遭遇するこれらの不思議な現象について、文献に基づいた最新情報をお届けし、その謎に迫ります。
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