歯科衛生士 2022年11月号
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連載内で紹介している文献を、web上で見ることのできるものはリンクつきでまとめました。https://www.quint-j.co.jp/web/shikaeiseishi/index.php46虚血性心疾患、脳卒中 ここ数年で、慢性炎症がどのように全身疾患に影響するのかについて、新たな知見が次々に報告されています。口腔で慢性炎症を引き起こす代表的な疾患といえば、歯周病と重度う蝕。まずは、より研究が進んでいる歯周病をモデルとして、どのように口腔内の慢性炎症が全身疾患に影響するのか、そのメカニズムについて解説します。歯周病がん、誤嚥性肺炎、非アルコール性肝炎、潰瘍性大腸炎などアルツハイマー病、パーキンソン病 歯周炎は、歯周組織に持続的な炎症が引き起こされる慢性炎症性疾患であり、疫学的には、動脈硬化を含む心血管疾患、2型糖尿病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、アルツハイマー病、非アルコール性脂肪性肝臓疾患、特定のがんなど、他の臓器の慢性疾患に関連することが示されています1。これらの疾患に共通するのが、持続的かつ軽微な炎症(慢性炎症)をともなう疾患であるという点です2,3。 歯周病と全身疾患のどちらが主たる疾患であるかは、慢性炎症をともなう疾患群。これらの疾患は、慢性炎症を介してそれぞれ他の疾患に影響を及ぼし合う。Illustration:寺田久美、今﨑和広(文献2より引用改変)久保庭雅恵Masae KUBONIWA大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座予防歯科学准教授・歯科医師天野敦雄Atsuo AMANO大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座予防歯科学教授・歯科医師自己免疫疾患関節リウマチ、乾癬心血管疾患メタボリックシンドローム肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症慢性炎症その他神経疾患令和のう蝕に関する皆さんの常識を、サイエンスベースで覆します! 令和のう蝕病因論(カリオロジー)は、ミュータンス連鎖球菌と砂糖だけじゃ語れないのです。第10回脱・昭和の常識!歯周病と全身疾患は慢性炎症でつながる歯周病と全身疾患は持続的かつ軽微な炎症(慢性炎症)をともなう慢性炎症に関する最新情報歯周病菌&う蝕原因菌は厄介!~全身疾患に関する最新情報~重度のう蝕や歯周病によって口腔内に持続的な炎症(慢性炎症)が存在すると、全身の免疫反応や代謝に影響が波及します。このことが、後述するさまざまな生活習慣病にかかわる万病のもとであることがわかってきました。また、もっとも強力なう蝕原因菌のミュータンス菌が脳出血や腎臓病をも引き起こす、という驚きの事実も最新の研究から明らかになってきました。今回は、これらの最新情報について詳細に解説します。

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