歯科衛生士 2022年11月号
5/11

1月号お口ぽかん、困った食べ方への新アプローチたのしい! 無理なくできる!TOPIC1Dr.オカザキのはじめに口腔機能発達不全に気づいたのは保育士!?岡崎好秀Yoshihide OKAZAKI国立モンゴル医学科学大学客員教授歯科医師 筆者が今で言う「口腔機能発達不全」について初めて耳にしたのは30数年前のテレビ番組でした。全国約40万人の保育園児を対象に“噛むこと”について調査した結果、「固形物を噛むことができない」「固形物を食べると口から吐き出す」「飲み込むのが下手」「固形物をそのまま飲み込む」「軟らかいものしか食べない」「口の中に食物をためこんだまま飲み込まない」「2~3回噛んだだけで動きが止まる」「しゃべる時、舌の使い方が下手」などの問題が次々に出てきました1-3)。 この問題に最初に気づいたのは、現場の保育士たちでした。保育園は、幼稚園にくらべ園児と接している時間が長く、また、基本的に給食です。同じ年齢の園児が机を囲んで同じ献立を食べるようすを見て、食べ方に個人差があることに気づいたのです。前述したようにさまざまな問題が挙がりましたが、共通することは「口の動きが少ない」ということです。 これまで口腔機能発達不全症の原因として、誤った離乳食などの与え方の問題がクローズアップされてきました。しかし、子どもを取り巻く環境が変わり、「口を使う機会」が減ったことも、これに大きくかかわり、口腔機能向上のためには目を向ける必要があるのではないかと筆者は考えています。今回は、そのなかでも楽しく続けることができる「口遊び」について注目してみます。具体的にみていきましょう。Illustration:大橋明子January 2022 vol.4651P051-059_DH01_TOPIC1.indd 512021/12/11 9:30Dr.オカザキの お口ぽかん、 困った食べ方への新アプローチたのしい! 無理なくできる!口遊びA1口腔機能発達不全症の要因のひとつとして考えられる「口を使う機会の減少」に着目し、子どもたちが楽しく続けられる「口遊び」や、保育園での取り組みを中心に紹介しました。54FROM 口腔機能発達不全症が増加している背景には、離乳食の与え方や食物の変化だけでなく、“口遊び”の機会の減少も考えられます。かつてはアッカンベ~、吹きゴマ、紙風船、シャボン玉、風船ガム、口笛などの口遊びを通して、口腔機能が自然に向上したのでしょう。しかし、“行儀が悪い”“不潔”“伝承者の不在”“マスク生活”などの理由で、口遊びの機会は失われつつあります。そこで本特集では「たのしい! 無理なくできる! 口遊び」について紹介しました。 ご質問に対する答えですが、これらはあくまで“遊び”の一環であり、トレーニングではありません。しかも相手は子どもです。“いかに楽しく”行うかがポイントとなります。 そのため、一つの遊びを“何回行う”とするのではなく、飽きそうであれば次の遊びに移るとするのはいかがでしょう。また、子ども一人ではなく、きょうだいや家族と一緒にゲーム感覚で行うとよいでしょう。 さらに、保育所など集団の場を利用する方法もあります。保育現場では、子どもたちの口腔機能の低下により“口に入れたままで飲み込まない”“噛まずに飲み込む”などが大きな問題となっていますが、“口遊び”はこれらの問題にもアプローチできるため、協力が得られやすいと思います。院長が口遊び口遊び岡崎好秀国立モンゴル医学科学大学客員教授・歯科医師Illustration:Igloo*dining*、石山綾子、おおの麻里、大橋明子、もり谷ゆみ園医をしている園やわが子が通っている園、保育関係の患者さんなどにお願いし、園全体で取り組めるようにお願いしてみてはいかがでしょうか。その際は、子どもたちが楽しみながら競い合う環境を作ることも大切です。いずれにせよ、子どもと一緒に楽しめるかがポイントです。 口遊びを行うことは、顔面の表情筋が発達し、かわいい笑顔につながります。すてきな笑顔は、一生の財産となるでしょう。“何回行えば……”という発想では、これにはつながりません。“口遊び”を通じて、口腔機能のアップだけでなく、笑顔のすてきな患者さんになってもらいたいと思いませんか?あくまで“遊び”。回数を意識するのではなく、“いかに楽しく”できるかを考えましょう。口腔機能をアップさせるには、1日にどんな口遊びを、何回行うとよいですか?P.54で「口遊びで口腔機能がアップする」とありましたが、保護者の中には「1日に何を何回やったらいいのか」と具体的に質問される方もいます。個人差はあると思いますが、どういう点に着目して見極めたらよいか、どのように目安を伝えたらよいか、例示していただきたいです。Q1TOPIC読者の皆さんからいただいた質問に、各特集の著者の先生方に答えていただく毎年恒例の人気企画。今回は、2022年上半期(1月号~6月号)の特集・TOPICへの回答をお届けします。(編集部)読者が聞きたいこと、

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る