「食べる」はここでも変る!Illustration:碇 優子和田ひとみHitomi WADAオーラルサポート[長野県]歯科衛生士 料理研究家である大瀬由生子先生の『食べることは生きること』(カナリアコミュニケーションズ、2018)という書籍があります。「食」とは、私たちが生命を維持していくことに欠かせないエネルギーの源です。歯科がかかわる「口」という器官は、その「食」に大きな影響を与える器官であり、口の持つ口腔機能こそが「食」を維持するために必要だとされています。 ただし、「食べる」ということには、機能だけでは解決できない問題も含まれています。たとえば、今まで一人暮らしが長く、食事はいつも一人で摂っていた方がいました。病気をきっかけに急に施設へ入所されましたが、入所から半年、「食べたくない」と食堂に行くことを拒否し始めました。職員の配慮で居室での食事を提案したところ、見事に毎回完食されるようになりました。「食べたくない」わけではなく、「食堂でみんなと一緒に食べることが嫌」だったのです。このように慣れない環境での食事は「食意の低下」につながることがあるのです。 しかし、私たち医療従事者は、つい機能や評価だけに注目しがちです。もちろんこれらはもっとも重要な情報源ですが、機能評価の結果を受けて実際の食事の場面の問題点に取り組むために必要なことは、医療面接や情報提供書から得られる「生活情報」です。 日々の診療や訪問の中で交わされる何気ない会話からも「食」につながる重要な情報はたくさんあります。たとえば、一人暮らしの若い方では「外食やコンビニ弁当が多くなってしまう」「自炊はせずにデリバリーばかり」、一人暮らしの高齢者では「ご飯と味噌汁がメインでおかずは漬物や煮物などになる」など食生活の内容が見えてくるでしょう。そしてそれらの情報は、患者さんにとって歯科医師には話しにくいけれど、歯科衛生士には話しやすい場合も多いのではないでしょうか。このように、「食事にかかわる要素」はさまざまあります。次ページから具体的にみていきましょう。65December 2022 vol.46わTOPIC機能だけじゃなく、生活環境なども「食べる」にかかわる
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