第1回矯正にまつわるトラブルも多く発生しています1。トラブルの内容としては、望ましい(計画どおりの)治療結果が出ていない、治療期間の長期化などが挙げられます。トラブルの原因としては、術者側の矯正治療に関する知識・技量不足、患者さんのコンプライアンスの問題(アライナーの装着時間を指示どおりに守らなかったなど)、が挙げられます。 しかし、アライナー矯正は術者側が慎重に適応症例(患者さんのキャラクター含め)を選択すれば、有効な矯正治療手段の1つと言えます*。今回の連載では、各種矯正治療方法の利点・欠点を知ること、そのうえでアライナー矯正について深掘りし、アライナー矯正に関する知識を増やすことをねらっています。さあ、これから勉強して、きたるアライナー矯正を希望される患者さんに対応していきましょう!Illustration:コージー・トマト、飛田 敏加治彰彦Akihiko KAJI半蔵門ファミリア矯正歯科[東京都]院長・歯科医師第1回矯正治療の方法を比べてみよう第2回アライナー矯正ならではの特徴を深堀!第3回アライナー矯正の患者さんでチェックすべきこと59February 2023 vol.47*アライナー矯正治療適応の可否の判断については、最終的には矯正治療の専門知識を持った歯科医師の判断によります。コロナ禍で矯正治療のニーズが高まる昨今、特に注目を集めるアライナー矯正。他の矯正方法とは違った特徴や適応(限界)、注意点などをコンパクトに解説します。 皆さんの勤務されている歯科医院でも、コロナ禍となってから矯正治療を希望される患者さんが増えたのではないでしょうか? その理由の1つとして、マスク生活となり、口元をあらわにする機会が少なくなったため、矯正治療をするには絶好のタイミングだと考える人が増えたことが挙げられます。一般的に治療が長期間にわたる矯正治療では、いったんトラブルが発生し、患者さんとの関係がギクシャクすると、来院のたびに術者、患者さんがともにストレスを感じることが継続することになりかねません。また、とくに抜歯をともなう矯正治療では、不適切な矯正治療により、治療前より咬合状態が悪化し、治療の難易度が高くなってしまうこともあります。ところで、近年マウスピース型矯正(以下アライナー矯正)の認知度が高まり、極力装置が見えないことを要求する患者さんは、アライナーのみを用いた矯正治療を希望される方も多くなりました。 ただし、アライナー矯正の普及にともない、アライナー アライナー矯正とは、透明な薄いプラスチック製のマウスピース(アライナー)による矯正治療のことで、プラスチックの弾性を利用して歯を動かします。アライナーは、その患者さんの理想的な歯並びに到達するまで段階的に作製され、歯が少しずつ動くように通常2週間ごとにアライナーを交換します。患者さんは食事とブラッシング時以外の使用が求められます。使用するアライナーの数はその患者さんの歯並びの状態によりますが、全顎矯正では30~40個ほど使用します。1990年代頃から大手の歯科技工所などが商業ベースで独自のアライナー製品を売り出し、現在では数十を数える製品が存在します。 アライナー矯正の仕組みについては、次ページ以降でさらに詳しく解説します。ニーズが高まっている今こそ、アライナー矯正の知識は必須アライナー矯正について、簡単に紹介TOPIC今のうちにチェック!アライナー矯正に詳しくなろう矯正治療の方法を比べてみよう
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