歯科衛生士 2023年2月号
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7インレー脱離●38歳●2005年伊勢保健衛生専門学校歯科衛生士科卒業●臨床経験年数:12年目●勤務形態:常勤●所属学会・スタディグループ:日本歯周病学会、日本口腔インプラント学会、日本老年歯科医学会、日本歯科衛生士会、金子歯科臨床セミナー●医院紹介:高齢化率53.1%の地域(73.5%の離島地域もある)で予防歯科医療を周知し徹底した医科歯科連携を行っている。Kiriko Kubo寺本歯科医院[三重県]歯科衛生士日本歯周病学会認定歯科衛生士[キーワード] 薬物性歯肉増殖症、歯周炎、歯周治療、SPT年齢、性別主訴右上の詰め物が外れた現症これまで定期的に歯科医院に通院したことがなく、疼痛が生じた時に歯科医院を受診し、主訴の改善のみを行ってきた。今まで歯周病と診断されたことはなかった。歯肉の腫脹は気になっていたが放置していた歯科的既往歴今回症例を紹介してくれるのは……症例をシェアして、ステップアップ!初診時の患者の基本情報全身的既往歴内服薬歯肉増殖症をコントロールする─ 現在、国内の高血圧症患者は約4,300万人いると推測されており1、国民のおよそ3人に1人が罹患していると言われています。筆者の日常臨床でも高血圧症の患者さんは多く受診されていますが、高血圧症治療に多用されるカルシウム拮抗剤は歯肉増殖を発症することが知られています2。その発生には薬理作用だけでなく、口腔衛生状態などの環境因子の関与が大きいとされています3。歯肉増殖症は、種々の原因により歯肉の過形成をきたす疾患ですが、重度の歯肉増殖になると、咬合障害や審美障害が起こり、また歯の移動により咀嚼機能の低下や摂食障害、言語障害が起こります4。治療法として、一般的に本剤の投薬中止および変更が挙げられていますが、高血圧症そのものの症状に影響をきたすため、投薬中止や変更をせずにコントロールすることが望ましいとされています。したがって、医科歯科連携の重要性もますます高まっています。 今回、薬物性歯肉増殖症の患者さんに対してプラークコントロールを中心とした歯周基本治療によって炎症因子を徹底的に除去したことで、薬剤の投薬中止や変更をせずに歯周組織の改善がみられた症例を経験したので報告します。 口腔内所見(次ページ図1、2)では、全顎的に歯肉の発赤、腫脹があり、特に67に著名な歯肉増殖を認めました。歯間乳頭部歯肉、辺縁歯肉が硬く線維性に増殖し、7は歯冠を覆い尽くすまでに肥大していることから、高血圧症治療にともなうカルシウム拮抗薬による薬物性歯肉増殖症が疑われました。歯周組織検査(P.81図3)では、7に7mmの歯周ポケットを認め、骨吸収(%/年齢)79February 2023 vol.4767歳(2019年初診時)、男性高血圧症(初診時血圧:168/107mmHg)ノルバスクOD錠5mg、アダラートCR錠10mg、リピトール錠10mgCase50はじめに ─投薬を継続しつつ薬物性高血圧症治療薬で薬物性歯肉増殖症を発症した患者さん久保桐子さん薬物性歯肉増殖症をともなう歯周炎患者に歯周治療を行い、SPTが継続されている症例

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