歯科衛生士 2023年4月号
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 「安全」は医療における最重要項目です。しかし、歯科医療における「安全」の確保は、昔ほど簡単ではなくなりました。理由は2つあります。1つは高齢化です。複雑で重篤な全身疾患をもち、多数の薬剤を服用・使用している高齢者が一段と増えています。これにより、全身疾患の把握と対応が以前より難しくなっています。もう1つの理由は医療技術の著しい進歩です。たとえば、重篤な心疾患で外出もできなかった方が、新薬、CRT*1や補助人工心臓のようなデバイス、あるいは新しい手術方法などにより、歩いて外来を受診できるようになりました。つまり、「歩いて来院された」患者さんだからといって、健康だとは限らないわけです。 患者さんを取り巻く医療の状況が変わりつつあるなかで、歯科医療における「安全」を確保するには、患者さんがもつ疾患と、その治療方法(薬剤を含む)を理解したうえで、医学的エビデンスに基づいたリスクマネジメントをしっかりと行わなければなりません。 そこで本特集では、多くの情報のなかから歯科臨床で遭遇する可能性の高い全身疾患について、最新情報も含めて解説します。(文献1を改変して作成)不整脈高血圧糖尿病脳血管障害虚血性心疾患慢性腎臓病(CKD)・透析07060504030201011~20歳*1 CRT:Cardiac Resynchronization Therapy:心臓再同期療法の略で、重症心不全に対する新しいペーシング療法。(%)80図1 全身疾患の年齢別有病率2019年に、ある歯科大学附属病院に来院した患者さん(N=1,704)の全身疾患有病率を年齢層別にグラフ化したもの。本特集で対象とした全身疾患は、すべて年齢とともに有病率が上昇する傾向を示した。なお、ここでは心房細動は不整脈に含まれるものとして、統計を行っている(年齢による増加傾向は同じ)。1~10歳21~30歳31~40歳41~50歳51~60歳61~70歳71~80歳81~90歳91~100歳34DHに必要な知識を全身疾患別にまとめました特集1有病率について 図1は、本特集で解説する全身疾患の年齢別有病率について、ある歯科大学附属病院に来院した患者さんを対象に調査した結果1です。1施設での調査なので、地域や施設の違いにより若干の差異はあると思います。しかし、この結果は、循環器疾患や脳血管障害などに関する信頼度の高い報告2と同じ傾向がみられましたので、本特集ではこの結果をもとに解説します。DHが確認すべき主なポイントがわかる

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