舌扁桃●臨床経験年数:23年目●2001年日本大学歯学部附属歯科衛生専門学校卒業●51歳●勤務形態:常勤●所属学会:日本歯周病学会(認定歯科衛生士)、日本抗加齢医学会(指導士)●勤務先概要:最高水準の歯科医療を提供するとともに、歯科医療人の育成を行う総合的な歯科病院。[キーワード] 剥離性歯肉炎、エクオール、QOL主訴現病歴歯科的既往歴今回症例を紹介してくれるのは……全身的既往歴職業身長、体重166cm、75kg、BMI27.2顔貌リンパ節特記事項なし開口障害3横指半開口皮膚疾患生活習慣ストレス睡眠時間月経エクオール産生なし家族歴Aki Kawamoto日本大学歯学部付属歯科病院[東京都]歯科衛生士April 2023 vol.47初診時の患者の基本情報年齢、性別53歳(2020年初診時)、女性塩気がある物や刺激物を食べると、歯ぐきがしみるのが気になる麻酔経験あり(異常なし)。88り(25歳時、異常なし)約6ヵ月前から歯肉が剥離するようになった。通院中の歯科医院で治療中に悪化したため、当歯科病院歯周病科を紹介された。かかりつけ歯科医にて、剥離歯肉の疼痛部位に副腎皮質ステロイド含有口腔用軟膏デキサメタゾンを約1ヵ月間1日1回塗布するように指示されたが、改善しなかったため使用を中止した88抜歯経験あアレルギー性鼻炎(その影響で口呼吸および低位舌による舌習癖が影響し、開口となっている可能性が考えられる)会社員(事務業)左右対称低位特記事項なしなし喫煙歴あり(1日7本喫煙していたが10年前に禁煙)、飲酒(週にビール1杯程度)あり6時間なし(最近閉経した)父は糖尿病、母はくも膜下出血により他界 「剥離性歯肉炎」とはどんな病状かご存じでしょうか? 日本歯周病学会編歯周病学用語集1には、「歯肉に剥離性びらんや浮腫性紅斑、小水疱を生じる歯肉病変で、閉経期前後の女性に多く、唇頬側歯肉に発症しやすい。また、刺激痛や接触痛などを伴うことがある。基礎疾患としては、口腔扁平苔癬、類天疱瘡、尋常性天疱瘡などがあげられ、このような皮膚疾患の一症状として歯肉に現れた病変と考えられているが、その成因は明らかではない」と記載されています。慢性の経過をたどることが多く、治療法はプラークコントロールの徹底および副腎皮質ホルモン製剤の局所塗布などによる対症療法になります2。しかし、残念ながらこれらの治療法だけでは、歯肉疼痛のため口腔衛生状態が改善されず、歯周病の長期的リスクを潜在的に増加させる可能性があります。 本症は閉経期前後の女性に多いことから、特に、女性ホルモンとの関連も示唆されています3。閉経前後に出現する女性の全身症状や疾患の多くは、エストロゲンレベルの低下が関係しています4。本稿では、エストロゲンに類似した化学構造を持つエクオールに着目し、歯周治療にエクオールサプリメントを追加することにより、歯肉の改善および患者さんのQOLが改善された症例をご紹介します。 患者さんは、初診時53歳の女性、職業は会社員(事務業)です。主訴は、「塩気がある物や刺激物を食べると、歯ぐ症例をシェアして、ステップアップ!91はじめに ─歯周治療にエクオールを追加し剥離性歯肉炎の改善を目指す─医療面接から歯肉疼痛などの情報を収集したCase52川本亜紀さん剥離性歯肉炎女性患者へのエクオール応用によりQOLが改善された症例
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