歯科衛生士 2023年6月号
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症例をシェアして、ステップアップ!85June 2023 vol.4770歳(2018年初診時)、女性なし服薬なし初診時の患者の基本情報全身疾患─歯科恐怖症で50年歯科医院に行く ことができなかった患者さん─[キーワード] 歯科恐怖症、歯周基本治療年齢、性別主訴以前から歯ぐきが腫れており、むし歯がある今回症例を紹介してくれるのは……●臨床経験年数:8年目●2016年兵庫県歯科医師会附属兵庫歯科衛生士学院卒業●29歳●勤務形態:常勤●所属学会・スタディグループ:日本ヘルスケア歯科学会(認定歯科衛生士)●医院紹介:日本ヘルスケア歯科学会認証医院として0歳から100歳まで幅広い患者さんのう蝕および歯周病リスクと口腔機能管理を行っている。Mami Miyataおおの歯科・矯正歯科[兵庫県]歯科衛生士 歯科恐怖症とは、「歯科治療に極度の恐怖を抱いている病態」で精神疾患における限局性恐怖症に分類されます1。過去に受けた治療がトラウマで発症することが多く、歯科医院に行けない、診療台に座れないなどの症状が起き、結果的に歯科医院から足が遠のくことで、口腔内が崩壊することも多々あります。 本症例の患者さんは、歯科恐怖症のため50年間歯科医院に行くことができず、う蝕と重篤な歯周病に罹患し、結果的に多数の歯を失ってしまっていました。長年歯科恐怖症に苦しんだ患者さんに対して、筆者は段階的エクスポージャー法という行動論的アプローチ(後述)を用い、歯科医院および歯科治療に対する恐怖心と不安を取り除き、継続的な通院を実現しました。また、う蝕治療や補綴治療などの歯科治療とともに、歯周基本治療を行った結果、咀嚼機能が回復し、継続的な歯周安定期治療に移行できましたので、報告いたします。 患者さんは70歳、女性です。初診は2018年で、主訴は「以前から歯ぐきが腫れており、むし歯がある」ということで来院されました。全身疾患、服薬はなく健康です。問診票を確認すると、備考欄に「歯科に恐怖心があり、とても怖くてしかたがない。治したいと決心して来院した」という内容が書かれていました。待合室に呼びに行くととても不安そうにされており、しきりに「怖いんです」とおっしゃっていました。カウンセリングは通常、診療チェアに座ってもらって行いますが、それさえも緊張するようでしたので、普段は付き添いの方が利用する椅子(次ページ図1)に座っていただいて行いました。 カウンセリングでは、歯科治療に関す宮田麻未さんはじめに歯科治療に関する不安についてカウンセリングで情報収集Case5450年ぶりに来院した歯科恐怖症患者に段階的に歯周基本治療を行った1症例

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