48ペリオドンタルディブライドメントが提唱される科学的背景 全身疾患と深くかかわり、その発症や進行には多因子が複雑に絡み合う歯周病。テレビやインターネット上の健康情報やCMによって歯周病の恐ろしさが伝わり、歯科衛生士が担当する定期的歯周ケアを受けるために来院する人々が多くなってきました。しかしながら、右に示したような悩みを抱えながら臨床に携わっていらっしゃる歯科衛生士も多いのではないでしょうか? 2018年にアメリカ歯周病学会(AAP)とヨーロッパ歯周病連盟(EFP)により歯周病の分類が刷新されました。日本歯周病学会においても、昨年3月に「歯周治療のガイドライン」が学会ホームページ上に掲載され、詳細がアップデートされています。私たち歯科衛生士も、歯周病の新分類をもとに歯周病患者に対するリスク管理を行うことが求められています。そこで欠かせないのが歯科衛生ケアプロセス(過程)です。歯科衛生ケアプロセスを活 ペリオドンタルディブライドメントは、ハンドおよび超音波スケーラーなどのインスツルメンツを使用して、セメント質を過剰に除去することなく、徹底して歯面や歯根面から歯周病菌やその副産物などの有害物質を除去するインスツルメンテーションをいいます1。 読者の皆さんの中には、学生の頃、歯面にマニキュアを塗った顎模型を用いて、すべての歯面上のマニキュアを削り取るというスケーリングの実習をした方がいらっしゃるかもしれ薄井由枝 九州看護福祉大学看護福祉学部口腔保健学科非常勤講師ペリオドンタルディブライドメントとは用すると、目の前の患者さんの状態や症状について順を追って考えることができるため、情報の取りこぼしもなく、何よりシステマティックに行うことができるので時短にもつながります。 また、歯周炎の治療およびメインテナンス/SPTにおいては、歯周病の主な原因であるバイオフィルムの除去がキーとなります。「セルフケア」と、セルフケアでは除去できない歯肉縁下バイオフィルム除去を行う「プロフェッショナルケア」に分けられますが、後者のプロフェッショナルケアとしての具体的な治療法をペリオドンタルディブライドメント(非外科的歯周治療)といいます。 本稿では、現在世界の歯科衛生士が行っているペリオドンタルディブライドメントと歯科衛生ケアプロセスについて、本学で行っている学内実習の内容や症例などをふまえて解説します。ません。ですが、ペリオドンタルディブライドメントでは“ガリガリとマニキュアを落とす”ようなやみくもなストロークではなく、“沈着物が付いている部位のみに側方圧を加える”という洗練された意味のあるストロークを使います。 かつて非外科的歯周治療は、細菌性プラークやそのエンドトキシンがセメント質に深く侵入することで増悪するという概念に基づき、SRPごとに感染セメント質を徹底的に除去することが不可欠であると考えられていました。し薄井由枝 九州看護福祉大学看護福祉学部口腔保健学科非常勤講師Illustration:石山綾子特集2これからの歯周病管理に欠かせない2つのキーワード最小の侵襲で最大の効果を ペリオドンタルディブ インスツルメンテーションは、低侵襲でなければならないペリオドンタルディブライドメント 歯科衛生 これからのDHが担う、これからのDHが担う、 より効率的・効果的な より効率的・効果的な
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