図1 予期不安と皮膚反応「漆が塗られる」と伝えられていた右腕で皮膚反応がより強く表れた歯科治療中に不安を抱く患者さんの頭の中では、どのような思考が広がっているのでしょうか。まず、不安が生じるメカニズムについてまとめます。54 私たちは、つねに頭の中でいろいろなことを考え、さまざまな感情を抱きます。実は、この感情が身体に影響を与えることが医学的にも明らかになりました。 それを示す実験が、医学書『やさしい心身症(ストレス関連病)の診かた』1でも紹介されています。被験者は、漆でかぶれる17歳男性です。実験では、患者さんに0.8%の漆液を両腕に同量塗布しました。しかし、実際に患者さんには「右腕には漆の液、左腕にはアルコールの液を塗布し、その変化を比較させてください」と伝えられました。するとどうでしょう。左腕よりも右腕の皮膚反応(かぶれ)のほうが広がっているのがおわかりでしょうか(図1)。同じ人体であるにもかかわらず、患者さんの両腕に反応の相違が表れたのです。 右腕に漆を塗布されることを聞いた患者さんの頭の中では、「かぶれてしまう。症状がひどくなるかもしれない。どうしよう」とさまざまな懸念が広がります。こうした患者さんがあらかじめ予期する不安を予期不安と言います。予期不安が生じた結果、皮膚反応が表れたことが示唆されています。(文献1より転載)右腕左腕特集2予期不安が身体にも影響を与える安心して歯科治療を受けてもらうために患者さんの不安を和らげるコミュニケーション&Part1なぜ、患者さんは不安を感じるのか
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