69August 2023 vol.47 う蝕や歯周病に代表される口腔疾患の進行により歯が喪失し、その結果、食生活だけでなく、社会生活などにも支障をきたし、からだの健康にも悪影響を与えることがわかっています。逆に、からだの健康状態が、歯周組織にも影響を及ぼすため、両者は双方向性に密接に関連し合っています。現在、「Periodontal Medicine」として、歯周病と心血管疾患、呼吸器疾患、糖尿病、妊娠にまつわる問題(早産・低出生体重児)、骨粗鬆症、リウマチ、アルツハイマー病を含む認知症など、50以上の全身疾患が独立して歯周病と関連していることが判明しています1-4。 つまり、その歯周病の原因であるデンタルプラーク(歯垢)をコントロールする毎日の口腔清掃習慣を見直すことで、お口の健康はもちろん、ひいてはからだの健康に好ましい影響をもたらす可能性を秘めています。皆さんが日常臨床で遭遇する患者さんのお口の健康を維持することが、そのままからだの健康につながるのです。だからこそ、臨床現場では歯科衛生士の皆さんが日々口腔衛生指導(OHI)を行っていることと思います。 しかし、なかにはOHIをどのように行ったらよいかわからない、またはそもそも患者さんの口腔内が改善されたか確信がもてないという声も耳にします。そこで、まずは自分の口腔清掃習慣と口腔内の現状を評価したり、普段の歯磨きについて考え直したりすることをぜひお勧めしたいと思います。実際、本学短期大学部の歯周病科臨床実習では、学生にみずからの口腔清掃習慣と現状の口腔所見を評価してもらい、歯肉に炎症所見が見られた場合はその理由、すなわち、自分自身の口腔清掃習慣や口腔清掃法について再考してもらっています。また、自分や他の学生の口腔内を評価し合うことで、適切な口腔清掃習慣やその方法を知ることができ、患者さんへのOHIにも活かせると考えるからです。 本稿では、3週間にわたるそのゼミの内容を紹介させていただきます。本稿の内容が皆さんの日常臨床を見直すなんらかの一助になればと思います。稲垣幸司Koji INAGAKI愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科教授・同歯学部歯周病学講座兼担教授・歯科衛生士リカレント研修センター所長歯科医師[前編]まずは口腔清掃習慣と口腔内の現状を評価しようTOPICはじめに臨床実習から学ぶOHI の最初の患者は自分自身!
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