歯科衛生士 2023年9月号
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 矯正治療では、歯が歯槽骨を溶かしながら歯周組織の中を移動します(コラム参照)。一方で、移動方向と逆側では、歯槽骨が新しく作られていきます。その結果、歯の位置が変わっても、歯周組織の状態は移動前とほぼ変わりません。これは誰もが経験からわかっていることです。 しかし、アクティブな歯周炎があると話が変わってきます。そもそも歯の移動による骨吸収はいわば炎症と同じようなメカニズムによって起こるのです。そこに歯周炎というさらなる炎症が存在すると、矯正移動によって歯槽骨がさらに破壊されてしまう可能性があります。したがって、歯周炎は矯正治療前にしっかりとコントロールする必要があります。 本稿では、矯正治療前の炎症のコントロールの重要性について、エビデンス、そして症例を通じて学んでいきます。炎症のコントロールの主役は歯科衛生士の皆さまです。この特集をお読みいただき、明日からの臨床の視点に少しでも変化があれば嬉しいです。図1 矯正力によって歯が移動するメカニズム歯槽骨34歯肉の中には歯槽骨があり、歯根膜がある。月星陽介Yosuke TSUKIBOSHI月星歯科クリニック[愛知県]歯科医師伊藤弥生Yayoi ITO月星歯科クリニック[愛知県]㈱COCO DentMedical歯科衛生士服部衣芳Iyo HATTORI月星歯科クリニック[愛知県]歯科衛生士月星朱理Akari TSUKIBOSHI月星歯科クリニック[愛知県]歯科衛生士Illustration:日の友太 まずは、矯正治療でどうして歯が動くのかをおさらいしましょう(図1)。歯に矯正力を加えると、圧迫側では以下の3つのステージによって歯が動き始めます1。①歯に圧力がかかることで歯根膜内の血流に変化が起きる②血流変化にともなって、化学伝達物質が放出される③ 骨芽細胞および破骨細胞が活性化されて、歯槽骨が吸収 化学伝達物質によって骨芽細胞および破骨細胞が活性化さ歯肉歯根膜されていく特集11そもそもなぜ矯正治療で歯を動か  はじめに月星陽介 月星歯科クリニック・歯科医師ちょっと待って! その歯を動かしても大丈夫?矯正治療における炎症

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