3演者論202れ、骨に代表される歯周組織が吸収され修復されていくこの過程はまさに「炎症」と同じと考えられます。しかし、この炎症は歯周炎のような不可逆的なものではありません。言い換えると、矯正移動によって起きる炎症で骨が一方的に失われているわけではないのです。 矯正移動中にエックス線写真上で歯槽骨がないように見えても、アタッチメントロスは起きておらず、歯根膜の位置は変化していないので、仮性ポケットを除いてプローブは深く歯が動く方向なりません。そして、矯正移動を止めれば、歯根膜の高さまで歯槽骨ができて、一層の歯根膜腔と歯槽硬線が見えてきます。このように、大前提として歯周組織が健康(=炎症がない)で歯周組織の量も十分(=歯肉退縮もなく歯槽骨も十分にある)な場合、歯を矯正移動させても歯周組織は破壊されません。牽引側 歯根膜が伸びる圧迫側 歯根膜が縮む牽引側 新しく骨ができる骨芽細胞圧迫側 骨がなくなる破骨細胞35歯に矯正力を加えると、その力が歯根膜に伝わる。歯が動く方向(圧迫側)の歯根膜は圧迫されて縮む。一方、反対側(牽引側)の歯根膜は引っ張られて伸びる。圧迫側では化学伝達物質によって破骨細胞が活性化し、歯槽骨が吸収される。同様に、牽引側では骨芽細胞が活性化し、歯槽骨が添加される。この結果、歯は移動することになる。(文献1より引用改変)September 2023 vol.4723文 せるのか のコントロール
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