歯科衛生士 2023年9月号
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[キーワード] 歯周治療、規格性のある資料、SPT年齢、性別主訴左上の歯肉が腫れて出血する歯科的既往歴今回症例を紹介してくれるのは……●臨床経験年数:20年目●1997年湘南歯科衛生士専門学校卒業●46歳●勤務形態:常勤●所属学会・スタディグループ:日本歯周病学会認定歯科衛生士、日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士、奥山会、さくらの会つぼみ、L☆DH●医院紹介:歯周病専門医のもと、生涯にわたる口腔内の健康の維持を目標に、歯科衛生士は担当制にて歯周基本治療、SPTを責任をもって行っています。症例をシェアして、ステップアップ!91September 2023 vol.4738歳(2014年初診時)、男性10年ぶりの歯科受診。前医ではう蝕治療の受診経験のみ20歳から1日20本の喫煙歴があるが、3年前より禁煙している特記事項なし 歯周基本治療において良好な結果を得るためには、治療に対する患者さんの理解と協力が重要となります。しかし、なかには、自身の口腔内の状態を把握せずに「歯科医院で歯科医師、歯科衛生士に歯周病を治してもらおう」と考えている方も少なくありません。そのため、歯周治療を自分事として捉え、「治したい」「健康になりたい」とみずから意欲的に取り組んでいただけるようなサポートが必要です。 歯周病は歯槽骨や歯肉の形状、色調など歯周組織が変化する病気です。そのため、筆者は以下の3つのポイントを重要視しています。①規格性のある資料を用い病状とリスクを伝える、②歯周基本治療中の変化を観察する、③記録を残すことでSPT中に変化する歯周組織を把握する。これらのポイントをふまえて、今回は規格性のある資料を活用したことで、患者さんに行動変容が起こり歯周組織の変化を実感した症例を報告します。 患者さんは38歳、建設会社で働く中肉中背の男性です。2014年に「左上の歯肉が腫れて出血する」という主訴で来院しました。3~4年前からブラッシング時に歯肉からの出血を自覚していましたが、痛みがないためそのまま放置していたとのことです。しかし、半年前から歯肉の腫脹を繰り返すようになり、歯周病を心配してインターネットで当院を調べて来院されました。 初診時の検査結果は次ページ図1~3のとおりです。口腔内所見では、歯肉に発赤、腫脹が認められ、とくに下顎前歯部に歯肉縁上歯石の付着、自然出血も認められる状態でした(次ページ図1)。臼歯部においても歯間部にプラークの停滞がみられました。デンタルエックス線写真(次ページ図2)からは、歯肉縁下Aki Suzuki塚本歯科クリニック[静岡県]歯科衛生士初診時の患者の基本情報全身的既往歴喫煙歴Case57鈴木亜紀さんはじめに─規格性のある資料を 活用して行動変容をサポートする─放置していた患者さん歯肉からの出血を歯周治療において規格性のある資料と記録の重要性を実感した一症例

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