●臨床経験年数:10年目●2014年九州歯科大学歯学部口腔保健学科卒業●31歳●勤務形態:常勤●所属学会・スタディグループ:日本口腔インプラント学会専門歯科衛生士、OJ(正会員)、歯想会、日本訪問歯科研究会(加藤塾)●医院紹介:患者さんと長くかかわる歯科医療をモットーに、在宅往診からインプラントまで幅広く診療を行っている歯科医院。症例をシェアして、ステップアップ! インプラント治療の目的は、歯の欠損に対して機能と審美性を回復すること、さらに早期に咀嚼機能の回復を目指すことが挙げられますが、治療期間や費用、侵襲性の高さなどの要素がかかわってきます。患者さんにとって重要な決断となるため、私たち歯科医療従事者は治療の選択肢を明確に提示することが求められます。しかし、時には患者さんが「おまかせします」という言葉を口にする場合があります。これは私たちへの信頼を示す一方で、治療にかかる時間や手間を患者さんが正確に理解していない場合もあるかもしれません。 近年、インフォームドコンセントという言葉があるように、患者さんに治療内容についてしっかりと説明し、理解してもらい、同意を得ることが重要です。しかし、たくさんの患者さんを診ている主治医がその時間を確保することは難しい場合もあります。患者さんによっては、その限られた時間のなかで理解できる人や質問してくれる人もいれば、忙しい主治医に対して自然と躊躇してしまう人もいます。そのため、周囲にいる私たち歯科衛生士がかかわることが診療への理解や安心、そして円滑な治療につながると考えます。 今回は、ひとつの症例から患者さんとのかかわりについて考察を加えたいと思います。 患者さんは初診時68歳の女性で、「上の前歯の入れ歯をインプラントに替えたい」という主訴で来院されました。筆者はもともと当院に通っていた患者さんの娘さんを担当しており、その娘さんに「母を診てほしい」と言われたことがきっかけで、歯周基本治療終了後よりかかわることになりました。 次ページ図1~3に初診時の記録を[キーワード] 長期治療、患者さんの言葉、モチベーションの維持年齢、性別主訴上の前歯の入れ歯をインプラントに替えたい今回症例を紹介してくれるのは……初診時の患者の基本情報歯科的既往歴83October 2023 vol.4768歳(2016年初診時)、女性歯周病により前年に前歯と下顎左側臼歯を抜歯大和咲紀さんSaki Yamato平井歯科医院[東京都]歯科衛生士Case58はじめに─患者さんの治療への理解のために歯科衛生士ができること─治療の説明をしても「おまかせします」の患者さん患者さんの言葉から気持ちをくみ取り、長期治療においてモチベーションを維持できた症例
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