00表1 日本におけるインプラント装着者の推定人数は約275万人年齢階級推定患者数(人)構成比率(%)25~2930~3435~3940~4445~4950~5455~5960~6465~6970~7475~7980~8485歳以上合計550,88320.029鈴木秀典 一般財団法人サンスター財団附属千里歯科診療所・歯科医師(文献1より引用改変)November 2023 vol.47166,71283,79866,234301,920234,175335,025271,260274,170281,407191,1682,756,7526.03.00.00.02.411.08.512.29.810.010.26.9100.0 令和4年度の歯科疾患実態調査1によると、現在国内には約275万人のインプラント使用者がいると推定されます(表1)。平成28年度の同調査2と比較して、6年間で約75万人増えました。そのうちもっとも使用者が多い年齢層は70歳代前半で約55万人。70歳以上のインプラント使用者は130万人ということで、国内のインプラント使用者の約半数を占めています。つまり、インプラント使用者の半数が高齢者ということになります。 インプラント治療を受けた患者さんは、治療を行った歯科医院で継続的にメインテナンスを受けることが一般的です。他院で治療を受けたインプラントにトラブルが発覚した場合であっても、かつては治療を行った医院に戻って対応していただくようお願いすることがつねでした。しかし、そういう患者さんの中には、元の医院に戻ることに抵抗感をおもちの方もいらっしゃいます。転院の決断に至るまでの間に、歯科医院とのコミュニケーションや信頼関係に何らかの問題があったという経緯を伺うこともあります。 また、ご高齢になると諸々の事情で治療医院までの通院をやめて、近医に転院を希望される方が多くなります。現役時代に職場の近くで治療を受けた方が引退された場合や、お子様の住む近くに転居をされる場合などの事情をよく伺います。治療医院が遠方の場合は、長距離の通院は体力的に負担となってくるでしょうし、今後は運転免許を返納されて遠方への通院をあきらめる方が増えてくることも予想されます。 上記のような背景から、他院で治療されたインプラント患者さんが皆さんの医院を受診する機会は今後ますます増加することが十分に予想されるのです。インプラント治療を受けた患者さんも高齢化している鈴木秀典 一般財団法人サンスター財団附属千里歯科診療所・歯科医師はじめに インプラント治療を受けた患者さんは年々増加しています(下記コラム参照)。最近では、他院でインプラント治療を受けた患者さんが自院を訪れる機会が増えてきたことを読者の皆さんも実感されていると思います。きちんとメインテナンスを受けてこられた患者さんばかりならよいのですが、適切なメインテナンスが継続されなかった結果、何らかの問題やトラブルを抱えていることも少なくありません。あるいは、今後メインテナンスを続けていく過程で問題が生じることもあります。 そもそも他院で高額な治療を受けたという経緯から、他院で埋入されたインプラントに対してそうそう簡単に手を出せない、出さないほうがいいというハードルの高さを感じられる方も多いと思います。しかし、よくよく考えてみると、他院で補綴治療を受けた患者さんのメインテナンスは日々の診療で当然のように請け負っていると思いますし、メインテナンスをしていくうえで問題のある補綴装置の再製を歯科医師に提案することもあると思います。自院でインプラント治療を実施しているかどうかにかかわらず、メインテナンスを請け負う以上、インプラントに関しても正しい知識をもって健康管理をしてもらいたいと考えています。 そこで今回は、他院でインプラントを埋入した患者さんを診るうえでおさえておくべき知識や、実際にチェックすべき項目について、症例とともにご紹介します。
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