bc52Illustration:ひのあけみ今村栄作Eisaku IMAMURA横浜総合病院 歯科口腔外科部長歯科医師渡部有香Yuka WATABE横浜総合病院 歯科口腔外科歯科衛生士(文献2より転載)歯周外科手術後の術後出血(大口蓋動脈の出血)で救急外来を受診した20代男性の口腔内写真(a)。救急部に持参されたビニール袋いっぱいの止血に使用したティッシュペーパー(b)。推定出血1,000mL(c)。図1 歯周外科手術後の術後出血aはじめに 歯科治療においては、抜歯などの小手術、歯周治療や歯肉縁下におよぶ歯冠形成など、観血的な処置が多いです。出血というと、外傷や手術による局所的な要因がもっとも一般的です。しかし、出血性素因のある疾病(出血性疾患)の患者さんや、抗血栓療法を受けている患者さん、易出血性の粘膜疾患を罹患している患者さんの場合は、軽度の歯肉炎や歯周炎、ブラッシング時の小さな傷でも普通では起こらないような出血が起こる場合があります。 もしも、われわれ歯科医療従事者が患者さんの病歴聴取が不十分な状態で、出血性素因のある患者さんだと知らずに観血的な処置をした場合は何が起こるでしょうか? 人間の血液量は4~5L(体重の約8%)くらいといわれ、血液量の約40%(およそ1~2L)を失うと生命の危険があると言われています1。抜歯や歯周外科手術後でも、数時間で400~500mL以上の出血を起こす場合があるので注意が必要です(図1)。特集2いざという時に慌てない!出血しやすい患者さんへの対応法
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