歯科衛生士 2023年11月号
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 歯周基本治療後に深い歯周ポケットが残る部位に対し、非外科治療で対応していくのか、外科治療を行うべきか、またどのタイミングでどのようにして患者さんに説明し、同意を得るのかという問題は、歯科衛生士としてつねに悩まされます。筆者はそのなかで、長期的な通院や経験したことのない歯周外科治療で不安な患者さんに寄り添い、何でも楽しく話しやすい雰囲気作りを大切にしています。 本症例では、セカンドオピニオンを主訴に来院され、歯周外科治療に不安を抱える患者さんに対し、歯周基本治療を通して信頼関係を構築した結果、歯周外科治療の同意を得ることができ、その後SPTへ移行し、良好な経過をたどっている症例について報告します。 患者さんは初診時59歳の男性です。第一印象はとても心配性だと感じました。主訴は、「前医にて定期健診を受けていたが、2ヵ月前に詰め物が外れて受診したところ、歯周病により右下の歯の抜歯が必要だと診断された」とのことで、ホームページを見て、当院に来院されました。右下の自覚症状について「歯ぐきが腫れている感じで、少し違和感がある」とのことでした。定期健診に通っていたにもかかわらず、突然「悪くなっている」と言われたことで、前医に対し不信感が生まれたようすでした。医療面接では、「現在も前医をクリーニングで受診しているが、今後は通院を続けるか悩んでいる」とおっしゃっていました。 次ページ図1~3に初診時の記録を示します。口腔内所見からは、口蓋側、舌側歯頚部にプラークの付着があり、辺縁歯肉の発赤を認め、とくに主訴であ症例をシェアして、ステップアップ!79Sakura Motoki医療法人スマイルプランスマイルプラン歯科クリニック西宮[兵庫県]歯科衛生士[キーワード] 垂直性骨吸収、慢性歯周炎、歯周治療年齢、性別主訴かかりつけ医院で「歯周病が原因で抜歯が必要な歯がある」と言われた前医にてメインテナンスを受けていたが、2ヵ月前のメインテナンスで6が歯周病により保存不可と診断された歯科的既往歴今回症例を紹介してくれるのは……●臨床経験年数:6年目●2018年平成医療学園なにわ歯科衛生専門学校卒業●30歳●勤務形態:常勤●所属学会・スタディグループ:日本臨床歯周病学会、日本歯科審美学会ホワイトニングコーディネーター●医院紹介:大阪、兵庫で6つのクリニックを運営する医療法人で、スタッフが成長する環境が整っている。歯科衛生士は法人全体で21名在籍している。November 2023 vol.47初診時の患者の基本情報全身的既往歴服用薬・喫煙その他59歳(2020年初診時)、男性歯周病により前年に前歯と下顎左側臼歯を抜歯なし口を長時間開けられないCase59はじめに─患者さんに寄り添い、 話しやすい雰囲気作りを目指して─不信感を抱いていた患者さん歯科医院に対して元木咲久良さん垂直性骨吸収をともなう慢性歯周炎に対し歯周治療を行った一症例

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