歯科衛生士 2023年12月号
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(P.36)4月号心房細動(不整脈)高血圧糖尿病虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)慢性腎臓病(CKD)・透析脳血管障害(脳卒中)APPE_P034-049_DH04_toku1.p2.pdf大渡凡人Tsuneto OWATARI九州歯科大学リスクマネジメント歯科学分野口腔保健・健康長寿センター教授(兼任)・歯科医師Illustration:中川視保子(P.38)(P.42)(P.40)(P.44)高血圧不整脈糖尿病脳血管障害虚血性心疾患慢性腎臓病(CKD)・透析71~80歳81~90歳91~100歳(文献1を改変して作成)(P.46)April 2023 vol.47352023/03/13 9:44P034-049_DH04_toku1.indd 352023/03/13 9:440特集1DHに必要な知識を全身疾患別にまとめました有病率について 図1は、本特集で解説する全身疾患の年齢別有病率について、ある歯科大学附属病院に来院した患者さんを対象に調査した結果1です。1施設での調査なので、地域や施設の違いにより若干の差異はあると思います。しかし、この結果は、循環器疾患や脳血管障害などに関する信頼度の高い報告2と同じ傾向がみられましたので、本特集ではこの結果をもとに解説します。APPE_P034-049_DH04_toku1.p1.pdfDHが確認すべき主なポイントがわかる 「安全」は医療における最重要項目です。しかし、歯科医療における「安全」の確保は、昔ほど簡単ではなくなりました。理由は2つあります。1つは高齢化です。複雑で重篤な全身疾患をもち、多数の薬剤を服用・使用している高齢者が一段と増えています。これにより、全身疾患の把握と対応が以前より難しくなっています。もう1つの理由は医療技術の著しい進歩です。たとえば、重篤な心疾患で外出もできなかった方が、新薬、CRT*1や補助人工心臓のようなデバイス、あるいは新しい手術方法などにより、歩いて外来を受診できるようになりました。つまり、「歩いて来院された」患者さんだからといって、健康だとは限らないわけです。 患者さんを取り巻く医療の状況が変わりつつあるなかで、歯科医療における「安全」を確保するには、患者さんがもつ疾患と、その治療方法(薬剤を含む)を理解したうえで、医学的エビデンスに基づいたリスクマネジメントをしっかりと行わなければなりません。 そこで本特集では、多くの情報のなかから歯科臨床で遭遇する可能性の高い全身疾患について、最新情報も含めて解説します。*1 CRT:Cardiac Resynchronization Therapy:心臓再同期療法の略で、重症心不全に対する新しいペーシング療法。図1 全身疾患の年齢別有病率2019年に、ある歯科大学附属病院に来院した患者さん(N=1,704)の全身疾患有病率を年齢層別にグラフ化したもの。本特集で対象とした全身疾患は、すべて年齢とともに有病率が上昇する傾向を示した。なお、ここでは心房細動は不整脈に含まれるものとして、統計を行っている(年齢による増加傾向は同じ)。(%)8070605040301~10歳11~20歳21~30歳31~40歳41~50歳51~60歳61~70歳201034P034-049_DH04_toku1.indd 34 ご質問は、厚着が多い寒い季節の外来でしばしば問題となります。ここではできるだけ複雑にならないよう、高血圧患者さんに限定して話を進めます。 高血圧ガイドラインでは、血圧測定は上腕を素肌にして計測することが勧められています1。しかし、血圧測定のために服を脱ぐことに抵抗を感じる患者さんは、少なからずいらっしゃいます。そこで、服を着たままで測った血圧が、脱いだ状態で測った血圧とどのくらい違うのかについて、複数の研究が行われてきました。筆者の調査では、6つの査読つき論文が見つかりました。そして、そのすべての論文が、服を着たままで測った血圧は、脱いだ状態で測った値と、統計学的な有意差はなかったと報告しています2-7。これらの研究で用いられた服の厚さは、1.7mm(平均)5、2mm以下3,4、2mm以上を含む2、とさまざまでしたが、Maら7は376人を対象に、平均4.3mmという比較的厚い服を着た状態と、脱いだ状態で収縮期血圧を計測し、その差は平均0.76mmHg(95%信頼区間:ー1.13~2.65)と小さく、統計学的にも有意58口腔保健・健康長寿センター特任教授・歯科医師ではなかったと報告しています(Hollemanの研究では服の厚みは不明でした6)。このように、「長袖のシャツやスウェットのような分厚い服」を着て来院した患者さんには、(肌を露出させる必要はなく)できるだけ薄着にしてもらって測定すれば、血圧の誤差はほとんど問題とならないといえます。なお、ほとんどの高血圧患者さんは血圧測定には慣れており、快く計測に協力してくれます。 次に、「服を脱いでもらうことや脇近くを触られることでストレスを与えてしまうのではないか」という問題についてです。このような理由で血圧測定を拒否する患者さんは、少ないですがいらっしゃいます。もし、手首血圧計が手元にあれば、その使用を提案してみましょう。特集でも述べたとおり、手首血圧計は誤差が大きいため使用は勧められておらず、各国の高血圧ガイドラインは基本的に上腕血圧計の使用を基本としていますが、そのうちのいくつかは肥満で上腕の血圧計がどうしても使用できない場合のみ、学会の確認がとれた手首血圧計を使用してもよい、と述べています8-10。ただし、できるだけ誤差を小さくするよう、図1に示した使い方で行ってください。 それも拒否された場合(もしくは手首血圧計がない場合)は、血圧測定はあきらめましょう。トラブルのもととなります。その場合、他の医療情報、たとえば、薬剤情報や医師からの情報、定期的に検診を受けているかなどからコントロール状態を推測するしかありませんが、非常に困難です。院長に相談し、専門の歯科医療機関への依頼も視野にいれて対応しましょう。DHが確認すべき主なポイントがわかる有病者チェックUPDATE歯科臨床で遭遇する可能性の高い全身疾患について、多くの情報のなかから、DHに必要となる知識と最新情報を中心に、チェアサイドですぐに使えるように疾患別にまとめました。4月号P.36に「血圧の測定は上腕で測る血圧計を使う」と記載されていましたが、たとえば患者さんが長袖のシャツやスウェットのような分厚い服を着ている場合、どのように計測したらよいでしょうか。服を脱いでもらうことや脇近くを触られることでストレスを与えてしまうのではないかと心配です。その他、測定にともなう声かけのしかたなどあれば教えてください。読者の皆さんからいただいた質問に、各特集の著者の先生方に答えていただく毎年恒例の人気企画。今回は、2023年上半期(4月号~6月号)の特集・TOPICへの回答をお届けします。(編集部)Illustration:さかがわ成美、高村あゆみTOPICQ1分厚い服を着ている患者さんでも肌を露出させる必要はありません。できるだけ薄着になってもらい測定するようにしましょう。大渡凡人九州歯科大学歯科医療リスク管理センター(DEMCOM)A1血圧を正確に測定する方法について教えてください。読者が本当に聞きたい

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