●臨床経験年数:5年目●2019年日本大学歯学部附属歯科衛生専門学校卒業●26歳●勤務形態:常勤●所属学会・スタディグループ:日本歯周病学会、中野予防歯科研修会●医院紹介:歯周病指導医の院長のもと、より多くの歯を救うことを目標とし専門的な歯周治療・歯周外科治療・インプラントなどの治療を行う医院。[キーワード]トラウマ、ラポール形成、行動変容7753歳(2020年初診時)、男性ブラッシング時の出血が気になる非喫煙者エパデール、アトルバスタチン会社員今回症例を紹介してくれるのは…… 診療を行うなかで、歯科医師よりも近い距離で患者さんと接することの多い歯科衛生士ですが、歯科に対して恐怖心を抱えている患者さんと出会う機Ryoko Kageno岩野歯科クリニック[東京都]歯科衛生士会も多いと思います。 普段、目に見える口腔内の問題だけに注目しがちですが、患者さんの恐怖心を理解するためには口腔内に大きな影響をもたらす環境因子をより深く分析することが重要になると考えています。しかし、初診時に「口腔内で起きた問題の原因は何ですか」と患者さんに問いかけても解決につながる返答はないと思います。重要なのは、患者さんと信頼関係を築くことです1。すなわち、ラポールが形成されることにより、医療者の話をきちんと聞いてもらえるようになり、それによって口腔内に生じた問題の原因を患者さん自身も理解できるようになります。さらに、私たちの提案する治療方針や指導を受け入れてくれるようになれば、それが口腔内の改善につながります。 今回は、過去のう蝕治療のトラウマで歯科恐怖症となり、40年以上歯科受診ができなかった患者さんのニーズを把握し、コミュニケーションを図りラポールが確立した結果、モチベーションの獲得と行動変容がなされ、全顎的な歯周治療に成功した症例の経過を報告します。なお、本症例は第66回春季日本歯周病学会学術大会でポスター発表を行った症例に、その後の経過を追加したものです。 患者さんは初診時53歳、会社員の男性です。家族から口臭について指摘を受け、区で行っている成人歯科健診を利用して当院を受診されました。主January 2024 vol.48影野涼子初診時の患者の基本情報年齢、性別主訴歯科的既往歴幼少期にう蝕治療全身的既往歴アテローム性動脈硬化症予備軍喫煙歴服薬職業はじめに幼少期のトラウマで40年以上も歯科受診できなかった患者さん症例をシェアして、ステップアップ!誌上歯科治療のトラウマにより40年以上歯科受診ができなかった患者にラポール形成を行い行動変容につながった一症例
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