歯科衛生士 2024年2月号
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 歯周病は自覚症状が少なく、患者さん自身が病状を把握しにくい疾患です。病状と進行度を正しく伝えるために有益なデータを提供することが患者さんの不安を軽減することになります。歯周病のSPTは多くの歯科医療機Yasue Takahashi塚口むらうち歯科矯正歯科[兵庫県]歯科衛生士*1 PISA:歯周炎症表面積(Periodontal Inflamed Surface Area)*2 PESA:歯周ポケット上皮の表面積(Periodontal Epithelial Surface Area)関で行われていますが、SPT移行時やSPT中のリスクアセスメントが十分に行われておらず、患者さんへの情報提供や説明も不十分になっていることが多くあります。PISA*1は数値の算出が容易でなくあまり広まっていませんが、医科歯科連携において歯周炎の全身への影響度を判定する指標です。 また、歯周治療を成功へ導くには、患者さんとの信頼関係の構築は重要なものです。患者さんのなかには、過去のトラウマから歯科医院や治療に対してネガティブな感情を抱いて来院される方もおられます。十分にヒアリングして患者さんの気持ちを理解し、患者さんに合わせた対応が求められます。 今回は、治療に対して何が最善であるかわからず不安に感じていた患者さんに対して、細菌検査を含むリスク分析を行い、歯周精密検査結果や口腔内写真、エックス線写真のほかに、OHIS(オーラルケア)、PISA、PESA*2、歯周病細菌検査結果の説明を行い、歯周病への関心を高くすることで行動変容を促しました。心理的側面に着目して歯周基本治療を行った結果、非外科的治療で改善し良好な状態を維持できている一症例を報告します。なお、本症例は第66回春季日本歯周病学会学術大会で発表を行った症例に、1年後の経過を追加したものです。 患者さんは初診時36歳の女性で、「下顎前歯部に違和感がある。4年間メインテナンスに通っていたにもかかわらず歯周病になり抜歯を提案されたため、不信に感じた」とセカンドオピニオン81今回症例を紹介してくれるのは……[キーワード]ラポール形成、患者教育、細菌検査、Er:yagレーザー、非外科的治療February 2024 vol.4836歳(2021年初診時)、女性セカンドオピニオンで受診、下顎前歯部に違和感がある●臨床経験年数:11年目●2013年岡山高等歯科衛生専門学院卒業●32歳●勤務形態:常勤●所属学会・スタディグループ:日本歯周病学会、スタディグループBreakthrough 大阪●医院紹介:メディカルトリートメントモデルを取り入れ、患者固有のリスク評価を行い、予防教育、地域の方の健康増進に寄与することをひとつの理念に置いている。症例をシェアして、ステップアップ!メインテナンスに通っていたにもかかわらず、抜歯が必要なほど重度の状態初診時の患者の基本情報年齢、性別主訴歯科的既往歴他院にてう蝕治療後、4年間メインテナンスに通院全身的既往歴特記事項なしはじめに髙橋康恵さん誌上患者教育を行いラポールを構築し、非外科的治療により改善した限局型重度慢性歯周炎症例

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