を求めて受診されました。 口腔内所見より下顎前歯部は歯肉、歯槽骨ともに薄く、11に歯肉の発赤と腫脹および重度の歯肉退縮を認めました(図1)。デンタルエックス線写真にて根尖近くに至る骨吸収像と歯肉縁下歯石の沈着を認めました(図2)。また、歯根間距離は1mmほどでした。歯周組織精密検査では、5~7mm以上の歯周ポケットを認めました(図3)。細菌検査では基準値を超えるレッドコンプレックスが検出され(図4)、歯周ポケット内の細菌叢は重度歯周病に関連する細菌の割合が多く占めていることがメタゲノム解析によってわかりました。PISAは404mm2で、これは2×2cmの傷口(潰瘍)と同等の面積であることを意味します。これらをふまえて、担当歯科医師により、限局型重度慢性歯周炎ステージⅢグレードCと診断されました。 「口腔環境を良くして自分の歯を長く維持し、再発を防ぎたいです。治療計画も提案してほしいです」と、健康意識は高い患者さんでした。下顎前歯部の歯肉退縮も自覚しており、「歯周病なのではないか?」と感じていたものの、指摘されることがなかったためそこまで進行しているとは思っていなかったとのことでした。しかし、前医にて抜歯を提案されたことから「このままでは歯を失ってしまうのではないか」と不安を感じられていました。また、過去の歯科的既往歴から「こちらから言わないと診てもらえない」と、歯科に不信感を抱かれていたので、はじめに情報提供および患者教育を行うことにしました。 まずは、歯周病についての知識を補うためにアニメーションソフトのデンタルフラッシュ4.0(cyberデジタル)を用いて歯周病の病因論を説明しました。そのうえで細菌検査の結果(図4)とOHIS(図5)をもとに歯周病の病状を伝え、治療方法と治療によって得ら82 図1 初診時の 口腔内写真全顎的に軽度の炎症所見を認め、11の辺縁歯肉には顕著な発赤と腫脹を認めた。健康意識は高く、抜歯は避けたい患者さん初診時(2021年)
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