52 現在一般的に使用されている母子健康手帳では、1歳6ヵ月児および3歳児歯科健康診査時だけでなく、就学前までの口腔の健康診査の状況が記録できるようになっています(図1)。 各自治体によって違いもありますが、健診項目には歯の状態や汚れ、う蝕の有無と処置すべきか、咬合状態などとともに「歯の形態・色調」の異常あり・なしについても記載できるようになっています。これに対して、「異常の判断が難しく、どの異常まで記載するべきか悩む」、といった声が挙がったことを受け、日本小児歯科学会は2023年4月に母子健康手帳の歯の形態・色調において、「異常あり」として記載したほうがよい例、記載の必要が必須でない例を示しました2。しかし、乳歯列での歯の形態および色調異常にはさまざまなものが存在するので、各形態異常歯の予後や、管理のポイントについて把握しておらず、保護者にうまく説明ができない、という歯科衛生士も多いのではないでしょうか。 そこで今回は、臨床で遭遇する頻度の高い形態異常歯について解説していきます。あらためて知識を整理して、患者さんの不安を軽くできるようになっていきましょう。(文献1より引用)Illustrator:関上絵美馬場篤子Atsuko BABA福岡医療短期大学歯科衛生学科・教授歯科医師特集2形態異常歯に不安を抱える患者さんにうまく説明ができずに困った経験はありませんか? 歯には、発育過程における形態分化期の障害によって、さまざまな形態の異常が生じます。口腔内検査で観察できるのは主に歯冠の形態異常で、癒合歯、切歯結節(犬歯結節・基底棘)、カラベリー結節、矮小歯(円錐歯・栓状歯・蕾状歯)、中心結節、プロトスタイリッド、歯内歯(陥入歯・重積歯)、タウロドント(長胴歯・台状根)などがあります。また、タウロドントなどはエックス線検査で発見できます。 学生時代に教科書で習ったこのような形態異常歯を、臨床現場で見つけることも案外多いと思います。しかし、歯科医療従事者は見慣れている形態異常歯であっても、患者さんの保護者やご本人は不安を感じている場合もあります。健全な永久歯列獲得のために、早めに指摘しておくことも重要ですが、指摘することで過度の不安を与えないよう配慮することも大切です。図1 母子健康手帳における1歳6ヵ月児の歯の状態を記載する欄の一例不安を安心に変える への形態異常歯説明と対応 [前編]
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