尾島賢治、檀 知里、熊谷友理子、渡邉仁資、渡邊 章、菅原準二、Ravindra Nanda尾島賢治尾島賢治 檀 知里 熊谷友理子 Yuriko Kumagai, D.D.S 渡邉仁資 Hitoshi Watanabe, D.D.S, PhD. スマイルイノベーション矯正歯科・新宿 〒160-0023 東京都新宿区西新宿1丁目3-17 新宿第一青井ビル4階渡邊 章 東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座 〒101-0061 東京都千代田区神田三崎町2丁目9-18菅原準二 仙台青葉クリニック 〒980-0824 宮城県仙台市青葉区支倉町1-31Ravindra Nanda, B.D.S, M.D.S, PhD. Professor Emeritus, University of Connecticut, Farmington, CT, USA 連絡先: 尾島賢治 E-Mail: kenjiojima@jaligner.comJournal of Aligner Orthodontics | 2022 vol.2 issue 1Kenji Ojima, D.D.S Chisato Dan, D.D.S Akira Watanabe, D.D.S, PhD. Junji Sugawara, D.D.S, PhD. キーワード アライナー矯正治療、開咬症例、前歯部挺出、治療難易度、MFTしたアタッチメントを設置することで、適切な歯の移動となるよう補完することができる。 こうした背景から、これまで前歯部の垂直的な挺出移動を必要とする開咬症例のアプローチに、アライナー型矯正装置は不向きであるという意見や考えが多かった。しかし2010年、Schupp Wによって前歯部開咬に対してアライナーとアタッチメントを用いて前歯部の挺出移動を行った2症例の報告3が発表された。さらにSmartTrack素材やステージングコントロールによって、アライナーで大臼歯の圧下を行うことができるようになったことから、下顎骨の反時計回りの回転によって開咬を改善するマルチブラケット治療のアプローチ4と同じく、アライナーでもバイオメカニクスを考慮しつつ開咬の治療レベル別にアプローチすることが可能になった。 2019年に著者らは、開咬の治療レベル別アプローチ(次ページ図1)に関する症例報告を、本報の共著者であるNanda Rとともに発表している5。また、著者らの歯科医院へ来院した開咬症例の患者らに対し行ったアライナー矯正治療の結果について、コネチカット大学矯正歯科と共同で後ろ向き研究として2020年に「Progress of Orthodontics」で発表した6。本報は、こ67日本版オリジナルページ 症例報告アライナー型矯正装置による開咬症例アプローチの背景 近年アライナー矯正治療に関する講演や論文発表が行われており、さまざまな不正咬合に対するアライナー矯正治療の可能性が拡大しているものと思われる。可撤式のアライナー型矯正装置は、軽度な叢生や歯列弓拡大などに多く用いられる傾向があった1。あるアライナー型矯正装置に関する研究では、アライナー単独による前歯部の圧下移動は予知性が高いが、挺出移動に関しては低いと記載されている2。そのため、挺出移動させる歯にバイオメカニクス(生体力学)を考慮アライナー矯正治療における開咬の治療レベル別アプローチ(前編)
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