Journal of Aligner Orthodontics | 2022 vol.2 issue 1LEVEL1LEVEL2LEVEL3LEVEL4LEVEL5日本版オリジナルページれらの分類・論文をもとに治療オプションを選択し良好な結果を得るという治療経験をさらに重ねたため、2回にわたってそれらの症例を供覧し、知見を読者と共有するものである。本報が、アライナー矯正治療を行う先生がたの臨床の一助になれば幸いである。上顎大臼歯の遠心移動小臼歯4本抜歯下顎大臼歯の遠心移動マルチブラケットとのコンビネーション治療外科的矯正治療LEVEL6図1 開咬症例の治療レベルの分類。数千回(ある研究7によると、平均嚥下回数は1時間あたり122回)、前歯部を舌側から唇側に押す舌の力が加わることで、前歯部が接触しないという奇妙な咬合を呈するようになる。それ以外にも呼吸器系の疾患(鼻炎、蓄膿症、アデノイド、扁桃生肥大など)で鼻呼吸ができず口呼吸を行うことで低位舌になったり、口輪筋が弛緩したりしたために前歯部が唇側に傾斜移動してしまうタイプの開咬もある。また吸指癖や下口唇を噛みしめるくせなど、開咬を招く習癖は多岐にわたる。開咬の治療ではこうした習癖の有無や特定、そして改善を矯正歯科治療開始前や治療中に行う必要がある。 ひと口に開咬症例といっても難易度はさまざまで、そのアプローチも同一ではない。共通するのは前歯部の挺出移動を治療に含めると改善するという点である。そして大臼歯の垂直的な移動が必要か否かで、治療難易度は大きく変わる。68前歯の挺出易しい ➡ 難易度 ➡ 難しい大臼歯の圧下前歯の挺出大臼歯の圧下前歯の挺出大臼歯の圧下前歯の挺出TADs大臼歯の圧下前歯の挺出TADs大臼歯の圧下前歯の挺出開咬症例の原因論:なぜ開咬症例は難しいのか? まず開咬症例のアプローチとして重要なことは、原因論として「臼歯部のみの咬合状態で前歯部が咬合していない状況がなぜ起こっているのか」を探ることである。特に開咬においてはここが他の不正咬合よりも重要であると考える。原因のなかでももっとも注目すべきなのが、嚥下時の舌の突出癖である。この習癖は本人も自覚していないことが多い。無意識下で1日に
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