Journal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2022 vol.2 issue 4 症例報告を含む多くの学術論文において、アライナーによるⅡ級不正咬合の良好な治療結果が報告されている。しかし標準化と簡略化がなされ、成功率の向上に足るエビデンスを有する治療プロトコールが示されるまでには至っていない。本稿では、Ⅱ級不正咬合の治療における上顎大臼歯の捻転改善が下顎の前方移動を可能にし、歯列弓内に排列スペースを確保することで、小臼歯、犬歯、切歯の遠心移動を生む戦略的な治療ステップとなることに焦点を当てる。 Ⅱ級不正咬合の患者によく見られる骨格的特徴として、下顎の後退が挙げられる。したがって、Ⅱ級関係の改善では、下顎の前方移動を促すことが有効的な治療戦略と考えられる1-6。さらに歯列を分析した結果、Ⅱ級不正咬合患者の85%に上顎第一大臼歯と第二大臼歯の近心捻転が認められたとされる。その原因のひとつとして、混合歯列から永久歯列に移行する際に残ったリーウェイスペースへの近心移動が挙げられている7,8。これにより、歯列弓長が減じて残存歯列の近心捻転が生じるため、犬歯のⅡ級関係が形成されてオーバージェットが大きくなる。 症例報告を含む多くの研究において9-13、アライナーによるⅡ級不正咬合の良好な治療結果が報告されているが、標準化と簡略化がなされた、成功率を高めるのに十分なエビデンスのある治療プロトコールはいまだ示されていない。本稿では、Ⅱ級不正咬合の治療において上顎大臼歯の捻転改善が下顎の前方移動を可能にし、歯列弓内に排列スペースを確保して小臼歯、犬歯、切歯の遠心移動を生む戦略的治療ステップとなることについて焦点を当てて述べる。Aldo Giancotti35Aldo Giancotti, Gianluca Mampieri翻訳:杉森 匡[日本大学松戸歯学部歯科矯正学講座]キーワード:アライナー、歯列弓長、Ⅱ級不正咬合、オーバージェット、上顎大臼歯捻転改善Aldo Giancotti, DDS, MS Gianluca Mampieri, DDS, PhD All: Professor, Tor Vergata University of Rome, School of Dentistry, Department of Orthodontics, Rome, ItalyCorrespondence to: Aldo Giancotti, Viale Gorizia 24c, Tor Vergata University of Rome, Rome, 00198, Italy. Email: giancotti@uniroma2.itⅡ級不正咬合治療における合理的アプローチ 従来の固定式装置を用いたⅡ級不正咬合の矯正歯科治療には、以下のバイオメカニクス的ステップをふむ必要がある。メソッドプレゼンテーション緒言Ⅱ級1類不正咬合における戦略的な治療ステップ:上顎大臼歯捻転改善の重要性
元のページ ../index.html#3