a図17 上顎左側犬歯と上顎左側第一小臼歯間の空隙の観察。 a:治療前のデジタル歯列模型。 b:Angelalignのバーチャルセットアップにおける予測。治療前の歯列模型(グレー)と予測される20ステージ時における歯列模型(白)の重ね合わせ。 c:治療前の模型(紫)と実際の20ステージ時における歯列模型(白)の重ね合わせ。三次元歯列模型の重ね合わせ分析を行った過蓋咬合をともなう骨格性Ⅱ級症例のアライナー矯正治療歯・第一大臼歯間に十分なOASの植立スペースが確認できる。第二小臼歯の遠心移動に用いるスペースを可能な限り多く確保するために、OASは大臼歯付近に植立した。また予測実現性のある処方として臼歯の遠心移動量を2.58mmにとどめた。移動量が多いと第二小臼歯の歯根がOASと接触し、OASの撤去と再植立を余儀なくされるからである。デジタル歯列模型の重ね合わせによる臼歯の遠心移動についての考察 アライナーを用いた臼歯の遠心移動の有効性を観察するため、デジタル歯列模型を採得した。デジタル歯列模型は口腔内スキャナー(R700 linear laser scanner、3Shape社、デンマーク・コペンハーゲン)でスキャニングし、ソフトウェア(Geomagic、米国・ノースカロライナ州)で構築した。デジタル歯列模型を口蓋皺壁の内側と外側の端点を基準に重ね合わせたところ28、カラーマッピングで良好な精度であることが確認された(図16)。 治療前のデジタル歯列模型では、上顎左側犬歯・第一小臼歯間に1.0mmの空隙が認められた。著者らはバーチャルセットアップ上で、上顎左側第一小臼歯を動かさず、上顎左側犬歯の遠心移動により空隙を閉鎖する治療計画を立案した(図17)。しかし、治療前のデジタル歯列模型と20ステージ目のデジタル歯列模型を重ね合わせると、空隙閉鎖は主に矯正力の反作用による上顎左側第一小臼歯の近心移動によってなされていることが明らかとなった。さらに、上顎左側における切歯の唇側傾斜、犬歯の不動、第一小臼歯の近心移動が観察されたことから、前歯部にアンカレッジロスが生じたことが示唆された。 0ステージ時と50ステージ時のデジタル歯列模型を重ね合わせると、バーチャルセットアップで2.58mmと示されていた臼歯の遠心移動量が、実際には1.30mmであることが明示された(次ページ図18)。小臼歯の順次遠心移動では、反作用によって徐々に遠心移動量が減少しており、これは臼歯遠心移動中の前歯部の唇側傾斜の防止、臼歯の固定の強化による近心移bc33Journal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2023 vol.3 issue 1
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