飯嶋雅弘飯嶋雅弘 IIJIMA Masahiro, D.D.S., Ph.D. 𡈽𡈽𡈽 大 TSUCHIDA Dai, D.D.S., Ph.D. 北海道医療大学歯学部歯科矯正学分野 〒061-0293 北海道石狩郡当別町金沢1757 連絡先 E-Mail: 飯嶋雅弘 iijima@hoku-iryo-u.ac.jpJournal of Aligner Orthodontics 𡈽日本版𡈽 | 2023 vol.3 issue 3キーワード ブラケットボンディング、ディボンディング、エッチング、セルフエッチング、エナメル質の喪失、歯面清掃 本稿では、マルチブラケット装置を用いた治療を行ううえで必要なブラケットのボンディング(接着)とディボンディング(撤去)の基礎的な知識について解説する。また本稿が、読者の臨床におけるレジン接着・撤去時の参考にもなればと思う。63飯嶋雅弘、𡈽𡈽𡈽𡈽𡈽𡈽 開発当初のアライナー型矯正装置は、矯正歯科治療の仕上げ段階における歯の小さな移動を目的とするものであった1。1990年代後半には、CAD/CAMベースのアライナーシステムが市場に参入し、その後のアライナー矯正治療用CADソフトウェアや熱可塑性樹脂材料の発展とともに、幅広い症例に対してアライナー型矯正装置が用いられるようになった2。アライナー型矯正装置は、透明で審美性に優れ、可撤式のため口腔衛生管理も容易であることから、市場への普及が近年急速に進んできた。しかしながら、アライナー型矯正装置による矯正歯科治療では歯の移動に限界があり、どのような症例でも十分な治療結果が得られるとは限らない。したがって、状況によってはマルチブラケット装置の併用が必要となることを理解する必要がある。日本版オリジナルページレビュー論文はじめにブラケットのエナメル質への接着の基礎 マルチブラケット装置におけるブラケットボンディングは、1955年にBuonocore3により紹介されたエナメルエッチングと1965年にNewman4により紹介されたブラケットの歯面へのダイレクトボンディングの概念を基盤としている。ブラケット用接着材料の進化にともない、日本では1971年にMiuraら5によりスーパーボンドを用いたダイレクトボンディング法が紹介され、その普及が加速した。 通常のブラケットボンディングでは、リン酸を用いたエッチング(酸処理)により細かく粗造になったエナメル質表面に対し、ボンディング材が浸透してレジンタグ(硬化したレジンの小突起)が形成されるという、主に機械的な篏合によりブラケットの接着が確立されブラケットのボンディング・ディボンディングの基礎から学ぶレジン接着の取り扱い方
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