文野弘信文野弘信 COVID-19の5類感染症移行とともにマスク生活から解放されつつある本邦であるが、依然としてアライナーを用いた矯正歯科治療の人気は高く、患者および術者にとって利便性が多いことから、今後もこの流れを止めることは不可能と考える。これは、テクノロジーの進化にともない矯正歯科臨床へのハードルが低くなったことも主な理由のひとつであろう。しかしながら、不正咬合を個性正常咬合へと導いていく過程は、今も昔も変わらないと著者は考えている。術者が患者の主訴に耳を傾け、検査・診断にて不正咬合における原因や問題を明らかにし、予測可能性のある治療目標を構築し、計画した治療ゴールへと到達するための治療方法(治療メカニクス)を選択するという過程は、人間の頭脳に頼ることが大半であるからである。 しかしそうしたメリットがある一方で、その人気と文野弘信 FUMINO Hironobu, D.D.S., M.S. 文野矯正歯科 〒104-0061 東京都中央区銀座4−3−10 連絡先 E-Mail: fuminodds@gmail.comJournal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2023 vol.3 issue 5キーワード アライナー矯正治療、臼歯部開咬、症例の治療難易度、過蓋咬合、リカバリー比例して、アライナー矯正治療では患者と術者双方における問題が見られることが多くなってきた1。それは両者ともに「思ったとおりの治療結果が得られない(得られにくい)」という共通の問題認識をもっているという点である。たとえば、実際に当院に初診来院する患者には、「私の場合、アライナー矯正治療は向かないと思う」と口にする患者が多くなっている。理由を尋ねると、「アライナー矯正治療中の友達の経過や結果に問題が生じているから」との否定的な回答がなされることがしばしばという状態である(次ページ表1参照)。 そもそも、このような「アライナー矯正治療は治らない(治りにくい)」との問題認識を、患者と術者双方がもつこと自体、放置してはならないと考える。アライナー矯正治療において、患者と術者双方にとってのメリットを活かしていくためには、治療経過および結果における数々の問題を改善していかなければ、アライナー矯正歯科の明るい未来の実現は難しい。そこで本論では、アライナー矯正治療の臨床上における大きな問題点のひとつである、臼歯部開咬の発現とその対処方法について述べる。なお、本論の一部は、参考文献に記載した著者自身の著書からの引用を含む2。77日本版オリジナルページメソッドプレゼンテーションはじめにアライナー矯正治療における臼歯部開咬発現のメカニズムとリスク回避
元のページ ../index.html#3