3演者論202文南舘崇夫南舘崇夫 AngleⅡ級不正咬合は、成人の矯正歯科治療において多く認められる不正咬合のひとつである1,2。 マルチブラケット装置でのAngleⅡ級非抜歯治療では上顎遠心移動を行うために歯科矯正用アンカースクリューを使用した症例報告3,4があるが、FMAの開大および下顎の時計回り回転が生じやすく5、Ⅱ級症例における前後(A-P)関係の悪化やオーバーバイトの減少が起こりやすい。 一方、アライナー型矯正装置でのAngleⅡ級非抜歯治療では上顎遠心移動にスクリューを使用せず、顎間ゴムによる治療を行って良好な結果を得た症例報告が多く見られる6,7。また前歯部開咬症例に関しても、アライナー単体で良好な経過を得た症例が多く報告されている8,9。Balboniらは、アライナーを用いたAngleⅡ級症例の矯正歯科治療において反時計回りの南舘崇夫 MINAMIDATE Takao, D.D.S. 福岡MA矯正歯科 〒810-0042 福岡県福岡市中央区赤坂1丁目13−8 赤坂ウィング 3階 連絡先 E-Mail: info@fukuoka-kyosei.comJournal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2023 vol.3 issue 5キーワード 薄い歯槽骨、ボーンハウジング、Ⅱ級不正咬合、オートローテーション、反時計回りの回転、前歯部開咬回転とFMAの減少を報告している10。またⅡ級開咬症例におけるアライナーを用いた非抜歯遠心移動は、臼歯の圧下をともないながらもオーバーバイトを適切な範囲内に維持したまま治療を進めやすい11。 本報では、前歯部開咬をともなう骨格性Ⅱ級症例に対するアライナー矯正治療において、上顎大臼歯の遠心移動に圧下移動も加えることで、下顎のオートローテーションを積極的に活用し、良好な治療結果を得ることができた症例について報告する。 患者は26歳女性、主訴は前歯が咬み合わない、前歯部の叢生であった。顔貌所見では正貌的に上下顎とも左右対称、側貌的にはコンベックスタイプで下口唇の後退を認めた。上顎歯列正中線は顔面正中線に一致し、下顎歯列正中線はわずかに右方に偏位していた。スマイル時の上顎切歯露出度およびスマイルラインは標準的と評価した(次ページ図1)。 口腔内写真では臼歯関係が両側ともAngleⅡ級(右側1/2、左側1/4)で、オーバージェットは+6.2mm、オーバーバイトは‐1.0mmで、上下顎前歯に軽度の叢生、89緒言日本版オリジナルページ症例報告症例前歯部開咬をともなう骨格性Ⅱ級症例アライナー矯正治療における下顎のオートローテーションとメカニクス
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