Journal of Aligner Orthodontics 日本版 2024年No2
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キーワード 口蓋部矯正用アンカースクリュー、スライディングメカニクス、CAD/CAM技術、上顎大臼歯遠心移動装置、歯体移動、コンビネーション治療 近年、アライナー矯正治療の急速な普及と相まって、アライナーの単独使用(アタッチメント、顎間ゴムなどの併用を除く)による治療効果の限界についても指摘されている。これらのアライナー型矯正装置の単独使用による治療の限界も、将来的には多様な技術の進歩にともなって少しずつ克服されていくことが予想されるが、現状におけるアライナーの生体力学的な欠点を鑑みて、それを補うことのできる他の矯正装置・器具の併用によりアライナーの治療効果を高め、その適応症例の範囲を広げることも可能であると考える。 筆者は、スライディングメカニクスとCAD/CAM技術、新しいデザインと機能のアイデアを融合することによって、上顎犬歯・小臼歯・大臼歯の遠心への歯体移動、上顎急速拡大、上顎大臼歯の捻転・傾斜の改善や圧下、上顎前歯の後方移動(リトラクション)などが可能となった矯正装置シリーズ「SHU-lider(シューライダー)」を日本で考案・特許取得(現在米国、ドイツ、韓国、台湾で国際特許を取得)し、ASOインターナショナル社と共同開発した。本稿では、上顎大臼歯の遠心移動を中心に、本装置の概要を紹介し、アライナー型矯正装置とスライディングメカニクスを併用した矯正歯科治療の可能性について考察・解説する。57山口修二 アライナー型矯正装置は、透明で目立たず、装着時の違和感が少なく、食事やブラッシングの際に取り外すことができ、デジタル技術により診断、治療計画の立案、最終的な咬合のシミュレーション、さらに歯の移動のステージング、生体力学的なカスタマイズができるといった特長を有するため、世界的に広く臨床応用されるようになった。 矯正装置やシステムの種類を問わず、いかなる矯正歯科治療も、歯冠のみならず歯根の位置や歯根周囲組織の状態、歯列の位置関係、咬合や顎機能などを考慮して行われるべきものであることは論を俟たない。また、各症例の診査および診断に基づき、歯の移動時に作用する矯正力や移動方向、移動する歯数や移動順序、固定源の設定などを十分に考慮し、治療目標を達成するために実現可能で効率的な移動方法や矯正力を決定する必要がある。山口修二山口修二 YAMAGUCHI Shuji, D.D.S., D.M.D.ドイチェ矯正歯科・大宮 〒330-0802 埼玉県さいたま市大宮区宮町2-118-1 モンクール宮町ビル3F 連絡先 E-Mail: shuji.yamaguchi@deutsche-dc.jpJournal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2024 vol.4 issue 2日本版オリジナルページメソッドプレゼンテーション & 症例報告はじめにアライナー型矯正装置とスライディングメカニクスを併用した矯正歯科治療(前編)

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