Journal of Aligner Orthodontics 日本版 2024年No2
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acbは、臼歯部のIPR、顎間ゴムの装着、臼歯部の順次遠心移動が行われ、両側第一大臼歯間の歯列を固定源として第二大臼歯から臼歯を順次後方へ押していく25。一方、一括遠心移動は歯列全体をまとめて遠心方向に移動するため、TADsの併用が必要となる。 Raveraらは、アタッチメントとⅡ級ゴムを併用しアライナーで治療を行った成人患者20名(男性9名、女性11名、平均年齢29.73歳)のセファロトレースの重ね合わせによる後ろ向き研究で歯の移動について評価し、上顎第一大臼歯の傾斜や垂直的な移動をともなわない遠心移動が平均2.25mm(平均治療期間24.3±4.2か月)であったと報告している26。Simonらは治療前後の模型、バーチャル3D模型の重ね合わせによる後ろ向き研究で歯の移動について評価し、患者30名(男性11名、女性19名、平均32.9歳)における1.5mm以上の上顎大臼歯の遠心移動について、予測移動位置に対し87%の精度を示したことを報告した27。またMao図11(症例2) SHU-lider EXによる上顎大遠心移動後の口腔内写真、パノラマエックス線写真。a:治療開始後2年5か月時、遠心移動後にガイド前方部を切断し、よりコンパクトな形態にしたb:治療開始後3年0か月時、上顎両側第一大臼歯は遠心移動後に固定できるc:治療開始後3年4か月時のパノラマエックス線写真。上顎両側第一大臼歯の遠心への歯体移動が認められる66日本版オリジナルページ印象採得を行い、新たに上顎大臼歯遠心移動用の装置を作製・装着する必要があった。その場合、新しい装置の装着まで後戻りを防ぐためにプレート状の装置などを2本のTADsで一時的に連結固定しておく必要がある。また、上顎急速拡大装置除去時に固定ネジを逆回転する必要があるため、TADs自体が緩んで脱落するおそれもある。こうした可能性に対しては、上顎急速拡大後にTADsと急速拡大装置を除去せず、そのまま利用して上顎大臼歯の遠心移動を行うことにより、治療の効果を高め効率化を図ることができる。Journal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2024 vol.4 issue 2アライナーによる上顎大臼歯の遠心移動の予測実現性 アライナーによる上顎大臼歯の遠心移動では、臨床的に順次遠心移動と一括遠心移動の様式が挙げられる。前後的な歯性のディスクレパンシーがある症例で

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