窪田正宏窪田正宏窪田正宏 KUBOTA Masahiro, D.D.S.くぼた矯正歯科医院 〒921-8151 石川県金沢市窪7-366 連絡先 E-Mail: hanarabi@kubota-orthod.comJournal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2024 vol.4 issue 4キーワード シミュレーション動画、確証バイアス、小臼歯抜歯、ボーイングエフェクト、オーバーコレクションてきた信頼度の高い診断方法である。また治療計画立案時には、歯列や咬合、顎顔面骨格のみならず、家族歴や既往歴、個々の歯および歯肉・歯槽骨などの歯周組織の状態、顎関節や口腔周囲筋の状態等を総合的に考え診断したうえで歯の位置を決定し、抜歯の必要性、固定源の確保、フォースシステムなどを考慮しなければならないことは、従来の矯正装置を用いた治療と同様にアライナーを用いた矯正歯科治療においても必要な観点である。 しかしながら、アライナー製作用のデジタルセットアップモデルは、すべての歯が三次元的に移動していく様子を動画で表現するため、他のどの分析資料よりも矯正歯科医の脳や感覚に対するインパクトが大きい。ここでは前述したように、二次元データを脳内で組み合わせて三次元データに変換する手間が省けるため、脳は余計なエネルギーを使わなくてすむ。 ある脳科学者によれば、人間の脳は全エネルギーの20%以上を消費していることがわかっており1、生命維持のために少しでもエネルギーを節約できるように怠けようとするらしい。だとすれば、たとえそれが予測実現性の低い移動計画であっても、治療計画ソフトウェアの動画上の歯の動きが矯正歯科医の潜在的願望69日本版オリジナルページメソッドプレゼンテーション&症例報告はじめに:なぜわれわれはシミュレーション動画に惑わされるのか アライナー製作のためのデジタルセットアップモデルは、これまで患者の歯列データだけをもとにしていたが、最新の技術ではCBCTから得られる歯槽骨内の歯根の位置データが反映されるようになり、歯槽骨内に三次元的に歯を排列する治療計画が作成できるようになった。これによって、従来のように側面および正面セファログラムから得られる二次元データを術者の脳内で組み合わせて考えるよりも、容易に三次元的イメージを得ることができる。 だからといって、二次元的なセファロ分析データが必要でなくなったわけではない。これまで多くの矯正歯科医が豊富なデータから確立してきたさまざまなセファロ分析法は、規格化された撮影方法で得られたエックス線写真上で患者の顎顔面および頭蓋の特徴を数値化し、平均値と比較分析することにより治療の目標を決定するという、治療の指標として長く用いられアライナーによる小臼歯抜歯治療における問題点と対処法
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