牧野正志牧野正志 最近、小児用アライナーや機能的マウスピース型矯正装置 ➡132ページ参照 の普及により、ローティーン患者(10代前半)にもアライナーを用いた治療を希望されることが多くなってきた。永久歯の交換が早い小児の場合、小学校高学年で歯列咬合が完成する。しかし、身体的にも精神的にも成長ピーク前にあるローティーン患者の時期から、全顎矯正治療を開始するか否かの判断には迷わされる。早期に治療を開始しても治療期間の長期化や予後不良が予測される場合は、10代後半まで待機するほうが良いこともある。しかし、ローティーン患者の顎顔面および口腔は成人にはない特徴があり、それをうまく利用することで良好な治療結果が得られることがある。その特徴とは、まとめると「萌出力と歯槽骨成長による垂直的変化」「思春期の下顎の成長」「歯周組織の高い代謝活性」の3つである。そこで本稿では、この時期の特徴を把握し、適切なアライナー矯正治療の計画立案ができるよう、症例をもとにいくつかのポイントを解説する。牧野正志 Masashi Makino, D.D.S. まきの歯列矯正クリニック 〒276-0049 千葉県八千代市緑が丘1-2-19-201 連絡先 E-Mail: makino.ortho@gmail.comJournal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2024 vol.4 issue 4キーワード アライナー型矯正装置、上顎前突、遠心移動、抜歯治療、固定源、成長期図1 ローティーン患者の歯の垂直的位置の変化。歯は萌出力と歯槽骨の垂直方向への成長により、挺出方向に移動する。萌出力歯槽骨の成長85日本版オリジナルページメソッドプレゼンテーション&症例報告特徴別に見るローティーン患者のアライナー矯正治療における留意点1 萌出力と歯槽骨成長による垂直的変化 歯には、歯肉から萌出したあとも萌出力が残っており、歯根尖が完成するまで歯冠側へ挺出する1。さらにその後も歯槽骨の垂直方向への成長は続くため、歯の相対的な挺出は継続する(図1)。ローティーン患者では、この挺出を選択的に促進あるいは抑制することローティーン患者のアライナー矯正治療(前編)
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