JAO[Journal of Aligner Orthodontics]日本版 2024年No.5
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文野弘信文野弘信 FUMINO Hironobu, D.D.S., M.S.DIO文野矯正歯科 〒104-0061 東京都中央区銀座4-3-10 MOTOKI N4ビル3階 連絡先 E-Mail: fuminodds@gmail.comJournal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2024 vol.4 issue 5キーワード 過蓋咬合、正中離開、シザーズバイト、不正機能、チンコントロール、バイオプログレッシブ法、診断回転が報告されており、臼歯部開咬の発生リスクと併せて過蓋咬合の改善は容易ではないとの報告が多い4。 本稿では、アライナーを用いて治療した空隙歯列と過蓋咬合をともなうⅡ級成人症例を供覧しつつ、筆者が矯正歯科治療で常に用いているバイオプログレッシブ法による診断および治療目標の設定、アライナーの特性を活かした治療方法について報告する。35文野弘信 矯正歯科治療における治療の対象は「不正咬合」であるが、その原因ともなる「不正機能」の存在も忘れてはならない改善すべき対象である。過蓋咬合は上下歯列弓関係における垂直方向の異常を認める、開咬とともに治療に手を焼く不正咬合のひとつに挙げられる1。そのうち前歯部過蓋咬合はアンテリアガイダンスに問題をもつだけでなく、Ⅰ級、Ⅱ級、Ⅲ級の臼歯関係や上顎前突、下顎前突などの前後的問題も併せもつため、前述した「不正機能」を含め、対象とする症例の原因を診断により詳しく調べる必要がある2。 過蓋咬合の治療方法としてマルチブラケット装置の選択およびストレートワイヤー法による改善には困難をともなうことが多く、歯科矯正用アンカースクリュー(以下TADs)の併用が必要となることが多いと報告されている3。一方、アライナー型矯正装置(以下アライナー)での治療では、咬合面を覆うという装置の特性から生じる臼歯部の圧下と下顎の反時計回りの日本版オリジナルページメソッドプレゼンテーション&症例報告はじめにバイオプログレッシブ法による診断およびアライナー矯正治療 バイオプログレッシブ法は、Ricketts RMを中心にGugino CF、Bench RWらにより1960~80年代に構築された歯科矯正学におけるフィロソフィーで、検査診断、治療目標の設定、治療メカニクスの選択、各種マネジメントまで一貫した考えに基づく治療法である5。骨格的な不正、不正咬合を含めた形態的問題の改善、習癖を含めた不正機能の改善訓練指導、顔面軟組織の審美的改善に加え、成長発育・発達における問題や成長予測などの治療目標設定を含む幅広い範囲を扱うものであり、より深い生物学原理に関する知識の習得が求められる6。特に本稿で供覧するような過蓋アライナー矯正治療における診断・治療目標・治療計画の重要性バイオプログレッシブ法に基づく過蓋咬合治療から考える

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