・患者に届けるまでの期間が短い ・歯科医師の意向を反映しやすい・製造コストを抑えられる [詳細は次ページ参照]図1 基本的な熱成形タイプのインハウスアライナー製作ワークフローと、外注型アライナーが患者に届くまでの違い。とを知り、2019年、同コースでIOSによる口腔内スキャン、デジタルセットアップ、3Dプリンタで積層造形した歯列モデルと熱可塑性樹脂シートを使用したアライナー製作のプロセスを学んだ。そして帰国後、インハウスアライナー製作に必須の機材である光造形方式の3Dプリンタを導入した。当院におけるインハウスアライナーの試みはここから始まったのである。 本稿ではインハウスアライナー作製のためのワークフローを中心に、必要な機材や材料、その利点や欠点、また症例を提示しながら適応症例や外注型アライナーとの使いわけ、インハウスアライナーの現在地と考えうる未来と課題などを、前・後編にわたって解説していきたい。まず前編では、基本的な熱成形タイプのインハウスアライナー製作ワークフローを中心に解説していく(図1)。後編では、実際のインハウスアライナー矯正症例や治療選択、ダイレクトプリントや安全性の担保について解説していく。口腔内スキャン検査診断治療計画立案インハウスアライナーデジタルセットアップ作成外注型アライナーメーカーの工場で上記工程にてアライナーを製作歯列モデルのプリントファブリケーション(海外の場合も多い)(樹脂シートの成型)Journal of Aligner Orthodontics 日本版 | 2024 vol.4 issue 5パッケージ患者へ52日本版オリジナルページ的容易となり、北米における矯正歯科医の約40%がインハウスアライナーの製作を行っているというデータもある3。インハウスアライナーによって、メーカーが規定するルールからの脱却と、歯科医師の診察を必要とせず患者に直接アライナーを届けるタイプの格安アライナーに対抗しようとする矯正歯科医たちの願いは、徐々に実を結びつつあるのかもしれない。 筆者が米国の矯正歯科医の間でアライナーを内製化しようとする動きがあるのを知ったのは、2018年のことであった。当時、アライナー矯正治療を患者に提供するにはAlign Technology社(Invisalign)やStraumann社(ClearCorrect)をはじめとするメーカーに外注することが主流であり、インハウスアライナーは一般的な方法ではなかった。しかしそのワークフローに興味をもった筆者は、米国・テキサス州ダラスで開業する矯正歯科医Jason Bryan Cope氏がインハウスアライナーのハンズオンコースを開催しているこ●❶●❷●❸●❹●❺
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